深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】我が家のおバカで愛しいアニキ~隠しごとや嘘は便利だけど対価として苦しみを背負う~

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≪内容≫

ネッドはバカがつくほどの超正直ものの天然男。いい人過ぎて、友人の警官に大麻を譲ってあげたら逮捕されてしまった彼は、出所後に彼女にもフラレ、居場所を失う。彼の3人の妹たちは、めんどうな兄を煙たがり、なかなか引き取ろうとしない。しぶしぶ、交代で彼を受け入れることにするが、兄は予想通りのトラブルメーカーで、あまりに正直すぎる言動で、迷惑をかけ続けるのだった。しかし、どこまでも憎めない彼の生き方を目にするに連れ、彼女たちの考えは少しずつ変わってゆく…。

 

 子供のころは「嘘つきはドロボウの始まりよ!」って言われて、世界は子供と大人で出来ていると思っていたのに、大人になってみるとみーんなドロボウ

 

嘘の積み重ねの上で私たちは生きている

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  主人公・ネッドは恋人と農場で生活していた。採れた野菜を市場で売っていると警官がマリファナを売ってくれと言ってくる。最初は断っていたネッドだったが、警官があまりにも懇願するので気の毒に思って売ってしまったネッドは警官に逮捕されてしまう。

 釈放後、恋人は別の恋人と農場を続けておりネッドの居場所はなくなってしまう。母親と暮らすことを拒むネッドは妹たちの家に居候兼アルバイトをして暮らすことを選ぶが、その先々で起こる隠し事を発見しては素直に口に出してしまうのであった。

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  人とのコミュニケーションを一番に考えているネッドにとって、聞かれれば答えてしまうのが常であった。相手に応えてほしい、そう思うネッドにとって疑いを捨て素直な心で人と向き合うことは当たり前のことであったが人は思いがけず、心にもないことを口にしてしまう生き物でもあるし、間違いを犯すものである。

 

 円満な家族生活を継続するために夫の浮気を見て見ぬふりをしたい長女と、高飛車なあまりつい相手をののしってしまう次女、自由奔放が行きすぎて行きずりの男との子供を妊娠してしまった三女。三人に起きた出来事はけしてネッドがハメたとか、扇動したわけではないのに、その事実を突きつけられた途端に妹たちは兄貴のせいだと言い始める。

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  隠しごとや嘘ってつい使ってしまうのだけど、対価として苦しみを受ける。それが長くなれば長くなるほど自分から言い出すことは苦しくなる。

 もちろん自分のタイミングていうのがあるけれど、それだって嫌なことを先送りにしているのと似たり寄ったりだ。ネッドはそんな妹たちの苦しみを引き受けて、一旦自分に矛先を向かせてから昇華させたのだった。

 妹たちからは「大人になってよ!」だの「子供なのよ!」だの言いたい放題言われていた兄貴でしたが、最後は自分のやりたいことを見つけ新たな人生を歩み出すのだった。

 大事なものを言い続けたからこそ、妹たちが取り返してくれた。小さな嘘が重なって重なってそれが今我々が立っている土壌と思う。だけど立っていられるのは自分がつく嘘が土壌の嘘より小さいから。それより大きな嘘はきっと呑み込まれてしまうから嘘もほどほどに生きていくのが善き、と思います。