深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】愛のむきだし~大人の「ダメ」を信じるな~

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≪内容≫

幼い頃に母を亡くし、神父の父テツと二人暮しのユウ。理想の女性“マリア”に巡り合うことを夢見ながら、平和な日々を送っていた。しかしテツが奔放な女サオリと出会ってから生活が一変。やがてサオリがテツのもとを去ると、テツはユウに「懺悔」を強要するようになる。父との繋がりを保つために盗撮という罪作りに没頭していくユウ。そんな彼はある日、罰ゲームで女装している最中に、ついに理想の女性ヨーコと巡り合う・・・。

 

 ソロモンの偽証でも思ったんですが、大人って躾と称して「あれをしちゃダメ」とか「思いやりを持ちなさい」的なこと言ってくるんですけど、あれはただ言っているだけで、言った張本人が実行できているかは別モノです。

ソロモンの偽証 前篇・事件

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ソロモンの偽証 後篇・裁判

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 「ソロモンの偽証」の記事を読む。

 大体が自分が心がけていることや、理想や、できていないことを言ってます。とくにしつっこく言ってくることほど出来ていません。なぜなら、本人が出来ているならそこまでしつこく言わなくても出来ることだと思って見守ることができるから。

 でも子供って純粋だから言われたらさ、そういうこと言う先生や親は出来てるんだ!って思うじゃないですか。だって、自分が出来ないことを鬼かってくらいの声や顔で言ってきたのに自分出来てないとか有り得ます?

 んで、そういうことを認められなくて反抗したりウゼーダマッテロ!道に突っ走るのが10代ですが、なんで突っ走るかって今まで自分にそういうことを言ってきた大人を諦めたくないからなんですよね。

 んで、なんで諦めたくないかって諦めたら一気に自分が色褪せてつまらない人間になるんじゃないかという不安があるからだと思うのです。

 だから"諦める"のではなく"赦し"を覚えるために、宗教というのはあるのです。

 

人は不完全な生き物

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 主人公のユウ(西島隆弘)は神父で厳格な父親と二人暮らしだった。そんなある日、父に人生に刺激を求めながら神父の包容力にもあやかりたいサオリという恋人ができる。神父として正しい道に民を導かなければいけない父は、サオリがやってきてからは性欲との戦いであった。父はその苛立ちから息子のユウに毎日罪を告白することを義務付ける。

 毎日罪を作らねばならなくなったユウは躍起になって罪を重ねる。そんな日々の中、ヨーコ(満島ひかり)という女子高生に出会いユウは初めて性の目覚めを感じる。しかし彼女は男を毛嫌いしておりサオリの連れ子でもあった。

 

 ユウはヨーコを愛するが、ヨーコは男が嫌いだった。その隙をついたカルト教団の一味であるコイケ(安藤サクラ)はユウの弱みとヨーコの隙に付け込み二人と家族が住む一家に住み着く。そしてユウを悪者にして追い出し他の家族を結託させカルト教団へと取り入れるのだった。その事実を知ったユウはヨーコを助けるべくカルト教団へと乗り込む。

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  この映画の要である、ユウ・ヨーコ・コイケは大人のおもちゃ感が出てて、そこが結構苦しい映画です。同じような境遇だった人は見るのがキツイかもしれない。

 

 そもそも発端は、正しい道に民を導かなければいけない神父という重責を背負った父親人生に刺激を求めながらそれを他人に求めてしまうサオリに起因します。

 いわば、こうなったのは二人の願望の賜物です。

 ただ夫婦になったんじゃつまらないサオリは結婚が禁じられている神父に目を付けた。神父と恋仲になっても結婚となれば神父は神父という職業を捨てざるを得ない。サオリはそうなるまでのドラマチックな展開と、そこまでさせた魅力的な女という名誉を無意識に(たぶん)求めている。

 障害が多いほど恋は燃えると言いますが、まさしく二人が結ばれるためには障害が必要だった。だからコイケがやってきてユウの罪や恋心がバレるまではサオリが自ら火種を起こしていたのだ。つまり、コイケを好意的に受け入れたのも少なからず刺激や非日常が欲しかったのだと思う。

 そんな大人の欲望に振り回されるユウとヨーコ。そしてそれを目の当たりにするコイケ。ラストの父と母が二人で運動してるシーンはゾっとしますね。

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  コイケの父親もヨーコの父親も自分の性欲を娘のせいにした。そしてユウの父親は性欲に負ける自分がいながら性に目覚めた息子を激しく非難する。

 そういう大人の否定を真っ向から受け取った三人ですが、ユウだけは本気でヨーコを好きになったからこそ一番最初に大人を諦めます。こうやって書くと人を好きになるって言うのは一種呪いからの解放みたいなものをあるのかもしれませんね・・・。

 

 だけど一番純粋なヨーコはそれができない。誰も信じていない風で本当は誰よりも人間を信じていたからこそユウの手を取ることができない。できないことへの苦しみがバシバシ伝わってきます。

 

 ほんと、大人ってただ子供が年を重ねただけのことなんですよね。生まれて20年経っただけのことで同じ人間。だから赦すっていうのはきっと神にしかできない。でも諦め続けたら苦しいから神様の真似をして赦すってことを学んでいく。相手よりも自分を守るためにね。

愛のむきだし

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 仕事でもなんでも職業っていう肩書とったら同じ人間だし、肩書はアイデンティティじゃない。そうやって考えると、ちゃんと自分で自分の面倒を見なきゃいけないっていう自立心が芽生える。案外、人を尊敬したり「OOさんは才能あるから」なんて言う人は相手に押し付けてるだけだったりするから、むやみに相手を超人や神にしない方が自分のためにいい。