深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】運び屋~やり直すことを諦めなければ未来は変わる。~

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≪内容≫

クリント・イーストウッド監督・主演による実話サスペンス。孤独な日々を送る90歳のアールは、車の運転さえすればいいという仕事を持ち掛けられる。だが、それはドラッグの運び屋だった。やがて、彼に捜査の手が迫り…。

 

 人は何歳までならやり直しが可能で、何歳から諦めてしまうのだろう。過去を振り返ってああすれば良かったこうすれば良かったと後悔することはできても、未来に起こることをあらかじめ避けることはできない。だから人間は何歳でもやり直しがきくものだと私は6割は思っていて、残りのそう思いたい4割を後押ししてくれるのがこの作品でした。

 

やり直すより諦める方が簡単

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  主人公のアールはデイリリーという花を育て生計を立てていた。品評会や退役軍人の集まりなど、外との付き合いを大切にしていたアールは、娘の結婚式はもちろん、娘が成長する過程でのイベント(卒業式や洗礼式など)にも出なかった。

 そんなアールに対して妻も娘も嫌悪を隠さなかった。唯一姪のジニーだけが味方でいてくれた。

 しかし、アールが家族を顧みず、一心不乱に打ち込んできた花農場は12年後には経営が困難になり差し押さえとなってしまった。行く場所がなくなったアールに舞い込んで来たのは優良ドライバーであることを見込んでの運び屋だった。 

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  稼いだお金で姪の結婚パーティーのお金や学費、退役軍人の集まりに使っていたお店の修復費用など、他人のために使うことができたアールは、その後何度も麻薬を運ぶことになる。

 しかし麻薬となれば関係者は銃をつきつけてくるマフィア。マフィアの若者は、マフィアに脅えることもなく自由に停車してご飯を食べたりするアールが気にくわなかったが、アールは脅えることはなかった。戦争に行って帰ってきたという過去がアールを強くしていた。

 

 花農園の再起より運び屋としての人生を選んだのは、高額の報酬で周りの人を幸せにできたからだ。再び自信を取り戻したアールは別れた妻と娘と仲直りをしようとするが、流れていった月日はもちろん、これから先の時間だって買うことはできやしない。最後の最後にもう一度、アールにやり直すチャンスが与えられたが、そのときアールは運び屋として国道を走っていたのだった。

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 この物語は、アールと同じ90代の人たちや定年退職した人にこそ突き刺さるのかな、と思いました。まだ2,30代だと遠い未来の教訓といった感じに思えます。時間だけ買えないなんてなんて当たり前のことを言ってるんだ、と思ってしまう内は本当の意味での時間の大切さを感じられてないんだろうな、というか「時間」への考え方がまだよく分かっていなくて文字としてしか理解出来ていないんだろうな、と思います。

 それくらいアールの最後の告白には鬼気迫るものがありました。

 

 物事の大切さに気付くのって絶対後からだと思うんですよね。最初から本質に辿り着いて「分かった」と理解することは不可能だと思う。意味や理由を知って納得することはできても理解するとか自分の中に落とし込むってことは、体験を通さないと結構無理だと思うんですよね。

 でも人の人生って短いから、全部体験する時間がないので想像に頼るんだけど、それでも百聞は一見にしかず、体験したことに勝るものはないですよね。

運び屋(字幕版)

運び屋(字幕版)

 

  アールはもう家族とはやり直せないんだと諦めて、そのお金で別の人と交際したりお金で若い子と付き合うこともできたと思う。だけどそうではなくて、もう一度やり直したかったんだな、っていうのがこの映画の一番切なくて一番大切なところだな、と思いました。