
≪内容≫
「あなたは死刑判決をくだせますか!?」2009年5月21日裁判員制度がスタート。それは、抽選で決まった一般国民が、殺人などの重大犯罪の裁判の審理に参加する制度である。フリーターの相羽圭一は、裁判員に選出された。ネット難民となってしまった人生を変えるべく、圭一は法廷へ!! ≪裁判員制度≫は、彼の人生にいかなる影響を与えるのか!? 死刑制度の問題点を描ききった『モリのアサガオ』で、文化庁メディア芸術祭大賞を受賞した郷田マモラが、死刑裁判に巻き込まれていく一般国民の苦悩、そして希望を描ききる!!
昔、父がモーニングを買っていてそれでこの絵を覚えていた。
「きらきらひかる」は死因を探るお話でしたが、今回は人を殺そうと思っていた主人公が裁判員制度に選ばれ、自分と似た雰囲気の男が犯した罪を裁くことになったが、自分にはその資格はあるのか悩むお話です。
集団の悪が持つ力
主人公はフリーターの相羽圭一。有名な菓子メーカーに勤めていたがいじめにより退職に追い込まれ現在ネカフェ難民。親にはそのことを言えずその日暮らし。いよいよお金も尽きて思いつめた相羽は人を襲い金を奪うことを思いつくが、幼い頃に両親から聞かされた地獄の話を思い出し、自分に失望する。次の瞬間タイミングよく母親から裁判所から手紙がきていると連絡があり、残りの小銭で実家へ帰った。
後日、裁判員に選ばれた相羽が目にしたのは自分とよく似た被告人であった。
今回の裁判内容は「根古田観音丘殺人事件」と呼ばれ、近所の主婦三人がナイフで刺殺されるという残酷な事件だった。
被告人は事件現場となった土地の息子で鹿野川雪彦と言う。彼と相羽は同い年で同じアニメのキャラクターが好きだった。つい先日殺意をもった相羽は雪彦に特別な思いを募らせる。
雪彦は自分が殺したから死刑にしてくれと言うが、雪彦側の弁護人は観音丘の住民が集団で鹿野川家に嫌がらせをしていたことと、殺された三人が犯行現場となった桜の木の下で、鹿野川家の代々大切にしてきた桜を切ろうと相談していたことが原因として減刑を求めた。
しかし、観音丘の住民はそんな嫌がらせはなかったといじめの事実を否定。ついには雪彦の妄想とまで言われてしまう。裁判員に選ばれた相羽たちは真実はどこで大切なことは何なのか、思いがけず社会の制度について深く考えざるを得なくなるのだった。
雪彦の弁護人は観音丘で昔から続いていたいじめによって引っ越した人や、自分の母親がいじめをしているのを目撃した娘などから証言を得ており、どうにかして集団の悪を白日の下に晒そうと奔走する。
彼女がそこまでするのには忘れられない過去があり、彼女自身が集団の悪の加害者として生んでしまった悲しみがあるからでした。
そして主人公の相羽もまた集団の悪である社内いじめにより現在の生活に追い込まれた。
とはいえ失われた3つの命は戻ってこない。もし集団の悪を認め、死刑以外の選択が生まれれば前例のない裁判となることに裁判官たちは脅える。また被告人がアニメ好きであることも非難され、同じくアニメが好きな相羽は唐突に降りかかってきたアニメオタクへの痛烈な偏見にも肩を震わせる。
しかし、事件は全く別の真実を含んでいたことが後半で明らかになってくる・・・。
このお話は「集団の悪」は絶対無くならないことは分かるけど、集団という名前のない人間たちがすることは裁かなくていいのか?人数が多すぎるからってそれが悪であるという証明をあきらめていいのか?という内容です。
SNSや悪質コメントも名前のない「集団の悪」ですね。それによって実際に命を落とす人間がいることをニュースで知りながら、集団という大きな数が壁となり、心には届かなくなっているのかもしれません。
キンドルで無料で読めるので気になる人はぜひ読んでみてください。