《内容》
新しい街へと引っ越してきた15歳の少女・ミア。親の都合に振り回されることへの苛立ちと、大人の女性へと変わっていく自分自身への言いようのない不安の中、ミアはクラスでも目立つ存在のジアンナたちと仲良くなる。ミアは憂鬱な気持ちを振り払うように、仲間たちと悪い遊びに手を染めていく。そんな中、彼女は決定的な体の変化を感じ始める。しかし、それは明らかに「成長」と言うにはあまりに不気味で、不自然なものだった…。
こういった少女の思春期をテーマにした映画って数多く書かれていると思うんですが、これは結構悲しいです。一応ジャンルは「ホラー」らしいのですが、「ダークファンタジー」的な感じがします。グロイかもしれませんが、怖くはないと思います。
私的にはこの作品と結構リンクします。
思春期とは自分の居場所を探すとき
内容は、一番右の少女・ミアが転校をきっかけにクラスのワルなグループに入って、万引きやタバコ、お酒にドラッグ、クラブ、セックス・・・と順調に危ない橋を渡り続け、それと同時に生魚を食べたい欲求と生理が始まり、下半身が魚化していくお話です。
この物語、とりあえず「人魚姫」からきているんだと推測しているのですが、たぶんおとぎ話の中で人気なのって「人魚姫」なんですよね。よく、人魚をモチーフにした映画があるし、デルトロの最近の作品も女性ではないにしても人魚的な話だと私は思うのです。
でも人魚姫って群を抜いて悲しいじゃないですか。
「声を奪われて」「海の泡となり消える」んですから。
で、この作品の人魚・ミアの「声を奪われて」は、まさしく自分の悩み(身体の変化)を誰にも言えないこと。
ミアが言えないことをいいことに、他人はその口に自分の都合のいいものを突っ込んできます。
ミアはもうそれでもいい、と自暴自棄になりますが、ミアの唯一の理解者になるジアンナは、ミアの居場所はそういう「都合のいい慰み者」もしくは「晒し者」ではないと彼女をそこから引きずり出します。
いわば、人魚姫に「王子様を殺しなさい!」とナイフをくれる人魚です。
ですが、人魚姫がナイフを受け取りながら海の泡と化したように、ミアもまた消えてしまいます。
ミアはなぜ人魚になってしまったのか?
そして、なぜジアンナは人魚にならなかったのか。
この二人は、お互い両親との関係が良好でないという点で深く繋がっていきました。おそらくジアンナはミアに友情以上のものを感じていたと思います。二人はほぼ同じ体験をしていました。しかし、水槽の魚を食べたいという欲求はミアにだけ生まれました。
これはおそらく、ジアンナは今いる世界、母親から捨てられた今の家から出ようとは思っていなかったのに対し、ミアは今いる世界から抜け出そうとしていたからだと思います。
人魚姫は王子様をきっかけに今いる場所から新天地に向かいましたが、ミアも王子様がいないだけで同じです。今いる場所から新しい場所に向かうには「声を奪われて」「海の泡となり消える」というシナリオが設定されてしまうのです。
思ったんだけど・・・
今 時間を止めて
この瞬間を永遠に残せるといいね
それってマジで最高じゃない?
あくまでも今いる場所で刹那的な生き方をするジアンナの発言に、ミアは「そうだね」と返しますが、酒も万引きもドラッグも、何をしても癒えない渇きにミアは「本当の居場所」を見つけたいと願います。
「パンズ・ラビリンス」もそうですが、私はBADENDだと思わないです。もしかしたら本当に、ミアは人魚の娘かもしれないし。「イグアナの娘」みたいに。
ジアンナは病院に行こうと現実世界に引き止めますが、ミアは「晒し者」として認知される世界より、自分らしく生きられる世界を選ぶ。世界は一つじゃない。もし今いる場所が息苦しいなら、きっと本当の居場所が別のところにあるのだというサインだと思うから。