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書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】ブルーバレンタイン~野生の生き物にいったん心を注いだら、あなたは空を見上げて人生を送ることになる ~

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《内容》

ディーンとシンディ夫婦は娘のフランキーとの3人暮らし。長年の勉強のすえ資格を取り、看護師として忙しく働く妻シンディの一方、夫のディーンの仕事は朝からビールを飲みながらのペンキ塗り。ふたりの出会いは、シンディが医学生、ディーンは引越しのアルバイトで生計を立てていた頃。不釣り合いな二人だったが、ディーンのどこか飄々とした生き方と明るさにシンディは惹かれていった。若く夢があり、お互いに相手に夢中で毎日が輝いていた幸せな日々… そんなふたりの過去と現在が交錯しながら、愛の終わりと誕生が重なり合う、切ない慟哭のラストへと向かっていく。

 

 初めて見たのは、5年くらい付き合った人と別れた後でした。

 あまりにも映画の中の二人の言い争いが自分たちにそっくりで、そのときはものすごく癒されたのでした。こんなにおかしい恋愛は私たちだけではなかったんだって。

 それから何年か経って、今見た感想は当時より親近感は薄れたけれど、やっぱり好きだけじゃ一緒に生きていけないよね・・・って部分で一致したのでした。

 

愛と恩は別物

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でも野生の生き物に深い愛情を抱いたりしちゃいけない。心を注げば注ぐほど、相手は回復していくの。そしてすっかり元気になって、森の中に逃げ込んでしまう。あるいは木の上に上がるようになる。もっと高いところに止まるようになり、それから空に向けて飛び去ってしまう。そうなるのは目に見えているのよ、ベルさん。野生の生き物にいったん心を注いだら、あなたは空を見上げて人生を送ることになる 

(ティファニーで朝食を/ホリー・ゴライトリー)

 

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

 

「ティファニーで朝食を」の記事を読む。

  美しさと賢さを兼ねそろえたシンディーは、不仲な両親の一人娘で愛を信じられずにいた。その美貌から寄ってきた男性は数知れず。医学生時代には性経験は二桁を超えていた。

 医学の道は彼女を招き入れ、彼女もその道を悠々と歩いていたが、当時付き合っていた男が避妊をしなかったことにより彼女は子供を身籠ってしまう。

 体の変化に気づかなかったシンディーは避妊をしなかった男に激怒し突っぱねた。そして祖母の世話をしているときに、夫となるディーンと出会う。しかし中卒でアルバイト生活を送るディーンと医学生のシンディーではあまりに釣り合わない関係だった。

 だが、その後シンディーが妊娠に気づいたとき、支えとなってくれたディーンに愛を見出し彼女は涙ながらに結婚式を挙げるのだったが・・・。

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  勉強が好きなシンディーは向上心に溢れ、上昇志向の持ち主だったが、夫であるディーンは家族を持ち、夫であり父親であることに満足し、それ以上のことは求めていなかった。

 ただ、このまま平穏で平凡な家庭を維持し続けることがディーンの望みであったが、シンディーはディーンの歌や絵やダンスなどの才能を生かし何か今とは違うまともな人間になってほしかった。

 看護師として忙しく生活するシンディーと朝からビールを飲んでも成り立つ仕事に甘んじるディーン。そしてお互いに自分の生き方を曲げることはできなかったのだ。

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 いつか消える感情なんか信じられる?

 

  シンディーが求めている愛は、ちやほやしてくれる一時の愛ではなく、夫婦になっても変わらない愛だった。それをディーンの中に見つけたはずなのに、いつの間にか毛嫌いしていた親と同じようにいつか消える感情となってしまったのだ。

 

 ディーンはシンディーとほかの男との間にできた女の子・フランキーを自分の子供として愛情深く育てた。それにそのことでシンディーを責めることもなかったし、逆上した相手の男に一方的に殴られたり、とにかく失意のシンディーにとって救いとなった人物であることに変わりはないと思う。

 だけど恩と愛は違う。

 ディーンの愛やサポートによって回復したシンディーは元の道に戻っただけ。でも、それは私には正しいことのように思える。保護した野生動物が自分に懐いてしまってもともとの居場所に帰れなくなってしまうことを悲しむのと同じ気持ちだから。

ブルーバレンタイン (字幕版)

ブルーバレンタイン (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Prime Video
 

  ラスト10分、本当につらいなぁと思いながら見てました。もしシンディーが恩のために自分の心に蓋をして変わろうとしないディーンと一生を添い遂げることを選んだなら、それはディーンを無視することと同じだから。お別れできるのは本当に好きな人だけだから。悲しいけど、痛みを伴っても私は嘘のない愛がいい。