深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】特捜部Q カルテ番号64~ここまで我慢強く辛抱強く生きる人間に劣等もくそもあるかよくそが~

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《内容》

「特捜部Q」――過去の未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。
「Q」が今回挑むのは、80年代に起こったナイトクラブのマダムの失踪事件。
調査によるとほぼ同時に5人もの行方不明者が出ているという。
カール警部補は大事件の匂いを嗅ぎつけ捜査に着手。
やがて、壮絶な過去を持つひとりの老女と新進政党の関係者が捜査線上に浮かび上がってくるのだが……。

 

  大好き特捜部Qシリーズ。

 大好きなんだけど、毎度毎度事件の内容がえぐいなぁ。。。そして敵対する組織がでかいなぁ。。。と思います。

  まず女子収容所というのがあったのが怖い。

 

質の劣る者は必要ない

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 特捜部Qだけじゃないかもしれないけど、ほぼ被害者は女性っていうのが北欧ミステリー多い気がする。

 特捜部Qはさらに「血」というのが絡んでくる。移民者・アサドが主人公の一人であることからも、そういう排除思想に対してのメッセージもありそう。

 

 さて、今回は女性の中絶手術に関する事件。ただし、すべての女性ではない。質の劣る女性への暴力だった。

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 事件はとあるアパートの一室に白骨化した死体が三体、まるで食事をしているかのように椅子に座っていた…というオカルトなシーンから始まる。

 そこには保存処理されたペニスと睾丸、卵巣、女性器があった。

 

 三人の死体と、4つの椅子。

 カールは「一人足りない」とつぶやく。

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 一方、今回カールはアサドの移動を打診していた。もう一緒に働けなくなるのだがいいのか?と聞くアサドに、別にもともとただの同僚なだけで、時間がたてば俺のことなんて忘れるさ、とクールに突き返すカール。

 

 怒り心頭のまま席を立つアサドだったが、このアサドの心境が分かるのはこの事件の犯人の思想によってだということが、この作者のすごいところであり巧だなぁと思いながら見てました

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 事件は"寒い冬"という北欧の子孫の優生思想を持つ集団によるものだった。

 

健康な北欧の女性は子供を産め
劣等な女性は社会を汚すから産むなと

 

  60年前はスプロー島にあった女子収容所に劣等な女性を集め、不妊手術を行い、今は移民の娘たちに何も告げずに不妊手術を施していたのだ。

 しかもそれを正義だと思っていたし、その思想を持っている人間は数多く存在していた。

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  自分と同じ移民の娘が被害者であることを悟ったアサドは、まだ自分が妊娠できない体になったと気付いていない少女に真実を告げる。

 そして担当医を突き止め、カールより先に犯人にたどり着いたのだった。

 

 アサドは、前回もそうだけど、移民であるがゆえに目立った行為ではなくとも差別を受けている。差別というべきか区別というべきか、表立って非難はしないが、一線を引かれているのである。

 

 だからこそ、自分を差別しないカールのことも、やっと見つけた居場所である特捜部Qも人一倍思い入れが深かったのではないかと思う。

 帰る場所があるからいろんな場所に行けるように、帰る場所がないから見つけた場所を大事にするように。

特捜部Q カルテ番号64(字幕版)

特捜部Q カルテ番号64(字幕版)

  • 発売日: 2019/05/08
  • メディア: Prime Video
 

  ミイラとなった人たちを裁いた人間を誰が責められるだろうか。ミレニアムシリーズもそうだしアレックスもそうだけど、ここまで我慢強く辛抱強く生きる人間に劣等もくそもあるかよくそが。と思うのであった。