《内容》
民主弁護士会出身の弁護士スノ。自身の出世がかかった殺人事件の弁護士に指名されると容疑者の無罪を立証するため、唯一の目撃者である自閉症の少女ジウを証人として立たせようとする。自身だけの世界に入り込み、意思疎通が難しいジウ。あの日のことを聞き出すためにジウと心を通わせていく努力をするスノ。少しずつジウへの理解を示していくが、2人は法廷で弁護士と証人として向き合うことになり…。
大人になるにつれて子供の時の純粋な正義は失われていく。
この映画はそれを取り戻す物語。
人は人を騙す
中年弁護士のスノは、友人の借金の保証人になったせいで借金まみれになった父親の借金を返していた。
父親のお漏らししたパンツを洗ったり、料理を作って食べさせたり、スノは献身的に父親の面倒を見る優しい男だったが、未婚だった。
いわゆる'いい人'として生きていたスノだったが、大手事務所の弁護士になったことで、スノは今まで守ってきた正義と戦うこととなる。
依頼は、殺人事件の犯人の弁護。証人は向かいの家の自閉症の少女ただ一人。
対立する弁護士は、自閉症をよく知っており、証人のジウと信頼関係を結び、証言を得ていた。スノは彼をまねてジウと仲良くなろうとする。
もちろんジウの証言を信じるためではない。ジウの見たものは勘違いなのだとジウ自身に理解してもらうためだ。
ジウと距離を縮めながら、法廷でジウを傷つけるスノ。あくまで、ジウは自閉症という特別な人であり、そういった人間の判断は、一般の人間とは異なる、よってジウの証言に価値はない、と遠回しにそういったのだ。
さらに長年の友人である女性にも感情よりも利益・損得で物事を考えるように諭してしまい、首を横に振られてしまう。
お前が16歳になった年に
法律家になると言った時の
あの顔が忘れられない
まだあどけない顔で
”いいことをしたい”と言われた時
うれしすぎておならが出た
職業を聞いて喜んだからではなく
いい子に育ったと思ったからだ
スノが弁護している女性は、一審で無罪となり仮釈放された。スノが彼女に声をかけると、彼女は「息子に会いに行く」 という。
彼女は天涯孤独だと、そう言っていたはずなのに。
不審に思ったスノだったが、そのあとの彼女の言葉は先日ジウが自分との会話中に発した言葉と同じであった。
弁護士は自分の依頼人を弁護するのが仕事で、対立する側を弁護するのはルール違反だ。だが、真実は何か、それを証明するのが裁判で、”いいことをしたい”ためにこの場所にいるのなら、スノがとる行動は一つだけだった。
一方、ジウは自分が人より優れた能力を持ちながら自閉症であるために、弁護士にはなれないことを悟っていた。
だが、真実を伝え人を救うことができるのは何も弁護士だけではない。自分は弁護士にはなれないが証人にはなれる。その思いがこの事件の本当の真実を暴くのであった。
一瞬のいい人、誰かにとってのひと時のいい人になるのはわりかし簡単だ。だけど、いい人で居続けるというのは努力の結晶であるのかもしれない。