深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

女に生まれてモヤってる!/中野 信子, ジェーン・スー~女に生まれたらイージーモードは本当?~

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《内容》

「女らしさ」は誰のため?敵と味方とルールを再検証する。恋愛と結婚、私たちの戦略。なぜ女は自信を持ちづらいのか。ジャストフィットな生き方は自分で決める。

 

 "モヤってる"っていうのがいいなぁ、と思いました。怒りでも哀しみでもなく、"うーん、なんだかなぁ"と首をひねってしまうあいまいなこのすっきりしない感情を的確に表すと"モヤってる"になる。

 

 女に生まれたらイージーモード?それとも男に生まれた方が得?レディースセットだとかレディースデイだとかあるけれど、それは誰の要望から生まれたもの?美人にはおまけがつく?でもそうやって"美人だから"と履かされた下駄の価値はいずこ・・・?

 

 私からしたら美しさと頭の良さを兼ねそろえてると思うお二人が語る女のモヤり。特に小タイトルの「お前なんか襲わねえよ」まで含めた腹が立つ件は、もうその文字だけで読む価値有と思わせるほど胸に響いた。

 

サービスではなく押さえつけられてるだけ

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スー:「女性2000円、男性1500円+プチデザートつき」ってイベントやりたいよ。同じものの値段が女性より500円安くて、ちっちゃい器に入ったひとすくいの杏仁豆腐と2粒ぽっちのフルーツもついてくる。「はい、男性だからサービスだよ」って言われる気持ちを男性にも体験してほしい。

 

中野:スカスカでおいしくないちっちゃいスポンジケーキとかね。まったく欲しくないでしょ。あれはよくよく計算すればちっとも得をしないクーポン券みたいなものでしょう。あれで「得してる」ことにされてしまう。

 

 こういう想像しやすい例で話してくれて有難い。「はい、男性だからサービスだよ」って言いながら店員が持ってきてくれたちっちゃい杏仁豆腐を男性に手渡す自分を想像したら・・・うっ・・・自己嫌悪でテンション下がった。

 

 この一言って何も悪くない。メンズセットみたいな感じでもともとお店が作ったサービスで、それを承知で頼んで自分が受け取ったから「はい、男性だからサービスだよ」って言うのは、何も悪くない。 

 でも、この言葉には確実に渡した相手を見下すようなそんな感情が・・・ある。もう、女として30年以上も生きているから言われる場合には違和感さえ感じなくなっているけど、言う側を想像したとき、思いのほかキツイ言葉なんだな、と思いました。

 

 こういうのって知りたくないんですよね。知らない方が幸せなの。だって知っちゃったらその日から男の発言がいちいち勘に触るようになるからね。

 

スー:あと、美人であるがゆえに人間扱いされない場合も結構あるか。たとえば合コンで、「今日は美人揃えたよ」と言われたら、出荷直前の在庫と同じ扱いだもん。

 

中野:そうだね。美人は「お前の中身なんかいらない」というメッセージを常に社会からうっすら受け続けているとも言える。美人である自分にあぐらをかけるような、言葉は悪いけれど、「適度に鈍い美人」はある意味幸せかもしれないよね。でも、繊細で頭のいい美人はかわいそう。「お前なんかいくらでも代わりがいる」「後から若い女の子はどんどん出てくる」というメッセージを受けながら、今受け取っている得がいつ失われるんだろう、と常に脅えながら生きていかなきゃいけないから。

 

 これを読んで最近の整形ブームのことを思いました。youtubeで整形のお話などよく見るのですが、「自分に自信が持てるなら整形した方がいい、してよかった」「整形して可愛くなったら周りが優しくなった」という意見がある一方、整形してアイドルもして本当に本当にかわいいのに自死してしまう人がいて、なんでだろうって思ってました。満足したんじゃなかったの?って・・・。

 

 きっと彼女たちは繊細で頭のいい美人だったんだろうな、と思います。お二人がその後話されていますが、美しさは失われていく資産であるからこそ、他の価値を身につけなきゃいけない。

 これは西原さんも言ってますが、周りが優しくしてくれても結局自分で欲しいものは自分で手に入れなきゃいつか失うときがくる。

 男も女も人間って誰もが自己中です。些細な一言で何気ない一言で他人に呪いを簡単にかけられる。でも自覚がないから本人はのほほんと生きてる。だから私はおしゃべりな人が苦手。(他人を傷つけないおしゃべりな人に出会ったことない)

 それでもブスより美人の方が人生得じゃない!って思う人はいると思うのですが、どうなのでしょうか・・・私は幸せな美人を思い起こせば見たことがないかもしれません。

 それは村上春樹の小説にもあるように、このお二方が言うように、他の人よりスポイルされやすい境遇にあるからだと思います。

 

スー:「普通は~」も危険ワードだよね。「普通」ほど、人と認識に差があることってないもん。できるだけ言わないようにしてるけど、なかなか難しいよ。

 

中野:もしかしたらY染色体がもうすぐなくなるかもって想像したら、今の社会が決めた「女らしさ」なんてどうでもよくなりません?そんな勝手に決められた女らしさで自分を縛ってしまうのは何の得にもならない。

 

 終盤にきて「女らしさ」なんてどうでもええわ!となる見事な展開。これたぶん読者も最初は「そうそう!」って共感してるんだけどだんだん面倒になってきて「もうどーでもよくね?」となった辺りドンピシャで入ってきたと思います。

 ですよねwもはや杏仁豆腐あざーす!って感じですw

モヤることあれど、序盤で中野先生が言った「女性は生き物として美しい」というを私も思っているので、損得関係なく女である自分はわりかし好きなのである。だけど、自信がなくておどおどして会社で白い眼を向けられることもあるので(それは女どうこうではなくコミュ障)お二人が自信がついたという37歳に向けて強くなろうと思いました。