《内容》
1991年、バブル期の西新宿。人気エッセイストの蜂塚沙保里は、名声と、超高級マンションでのセレブライフを手に入れた。でも―1962年から2013年―半世紀にわたり、忌まわしき未解決事件の記憶が、新たな悲劇を引き起こす―!
うぉおおおおお!
って最後なりましたね。伏線だなーとはずっと思ってたけど・・・まさか!!って感じ。真梨さんはミスリードというか、思考を逸らすのがうまいというか、とにかくいろんな刺激的な暴露が続いた後に来るからもうびっくりも満足感もすごかった。
そしてなんとなーく「鸚鵡楼」という響きも胡散臭いというかいわくありげな感じがして、フジコもそうだけどネーミングセンスが秀逸だと思う。
鸚鵡楼に囚われた女
「料亭のひとつに、”鸚鵡楼”と呼ばれる洋館があって、その跡地に建ったのが、このマンションらしいの。だから、ベルヴェデーレ・パロットっていう名前みたいよ。ベルヴェデーレは楼閣、パロットは鸚鵡って意味なんですって」
人気エッセイストの蜂塚沙保里が住むマンションは周辺に長く住む人からは「鸚鵡楼」と呼ばれていた。以前は会員制のクラブとして名高かった鸚鵡楼は戦争の空襲でもなんとか生き残ったが、その後起きた殺人事件により長く放置されていた。
しかし当時の記録を見ても犯人は記載されておらず、「鸚鵡楼」と呼ばれるきっかけとなったオウムの行方も分からなくなっていた。
そんないわくつきのマンションだが、一番安い部屋でも五十五平米、七千二百万円、一番高い部屋は三億円・・・という超高級マンションなのだった。
もちろん家計を支えているのは人気者の沙保里だ。夫と一人息子と三人暮らし。ここは高級マンション。エッセイのネタにはことつきない。ママ友との会話も義実家とのやり取りもネタの一つ。
何もかもうまくいってる・・・他人からはそう見える沙保里だったが、彼女には大きな悩みがあった。
嘘。全然、大丈夫なんかじゃない。あの子が、私を睨みつけている。憎しみを宿した目で。
千鶴子が、心配顔でこちらを窺っている。
このことを言ってしまおうか。
あの子が、怖いの。……息子の駿が。
一人息子の駿が怖かった。まだ幼稚園児の息子。
だけど息子の面影に犯罪者だった元恋人の影がちらついてしょうがない。あの男の感情が乱れると出る指しゃぶりの癖。幼子がするのは何も不思議ではないはずなのに、なぜかあの男とダブってしまう。
幸せなはずなのに、息子を見るとあいつがチラついてしょうがない。そんな沙保里に駿も懐かなかった。
窓の向こうの鸚鵡楼。そこでは、あの悪党が、ミズキを犯していた。僕は、その様子を思いながら、悪党と一緒に、ミズキを穢していく。
穢されていくミズキを思うとき、僕は生きている実感に溢れた。自分という存在がかけがえのない輝きに思えた。それが”快感”だということを知るのはもっと先のことだが、そのときは、ただひたすら、ミズキを穢してしまいたかった。
もっともっと穢してしまいたい。
いっそ、殺してしまいたい。
鸚鵡楼をめぐる殺人の記憶と新たな血。それは果たして土地が呪われているのか、はたまた鸚鵡楼に囚われた”誰か”がいるのか。
生まれついての性癖が世の中に受け入れてもらえなかった人は、常に自分の欲望を制御しているのだから表彰されるべきと言ったのは「ニンフォマニアック」だが
つまるところ、人間だれしも欲望があるのだ。そんでそれを綺麗に隠しても自分は騙せないし、制御できなければ相手を傷つけて因果応報が巡ってくる。
真梨さんの作品って人に勧めづらいwんですけど、これはかなり面白かったしそこまでグロさやキツさがなかったので真梨さん導入編でもイケそうです。