《内容》
ある日の放課後、由紀は中学校からの友人・綾と海辺に行く。その夜、由紀のスマホに綾が交通事故に合い亡くなったという知らせが届く。そしてどこからか綾が自殺したのでは?という噂が流れる。そんな中、クラスのリーダー結花が綾の悪口を言っているのを聞いた由紀は、彼女に花瓶の水を浴びせてしまう。だがそれを機に由紀はクラスで孤立する事になってしまい…。
高校生の多感で不安定な世界を描いた作品。
映画好きしか知らないような派手ではないけど繊細で感受性が豊かな作品だと思いました。
思春期とは全能感と空虚感の躁状態のことである
きっかけは何でもよくって
そもそも誰でもよくって
あたしも
あの子たちも
大人になったら
全部くだらないって思えるんですかね
主人公の由紀はクラスの2軍くらいの位置にいる。派手ではないけど暗くもない。騒ぐわけでもないけど、おとなしいわけでもない。仲良しの友達はいるけど、他の子とも普通に喋る。由紀は毎日仲の良い友達の綾と楽しい日常を過ごしていた。
由紀の友達の綾は長いストレートの黒髪で、前髪は目の上で切り揃えられたぱっつん。大人しくミステリアス雰囲気で男子から人気があった。綾に好意を寄せる男子の中には1軍女子でクラスのリーダー的存在の結花が思いを寄せる男子がいた。
目立つ綾とは違い平凡な日常生活を楽しんでいた由紀だったが、綾にキスをされた翌日、綾は交通事故により亡くなってしまう。
綾のことをよく思っていなかった結花は綾が亡くなったあと、事故ではなく自殺だとか本当は家庭で性的虐待に遭っていた等悪意のある陰口を叩き始める。
由紀は廊下で取り巻きの女子たちに意地の悪いニヤニヤした顔で亡くなった綾を侮辱するような発言を繰り返す結花に近づき、結花の頭のてっぺんで花瓶を逆さまにした。
人畜無害な由紀の起こした行動はクラスを変えることも結花を変えることもしなかったが、由紀はハブられることとなる。
一方で、由紀の幼馴染でクラスメイトの慶太は綾が亡くなった後、クラスから孤立し元気のなくなった由紀に告白。1軍にいながら結花のパシリ扱いの女子は脱退。クラスの大人しい女子は結花の命令で綾の体操着を隠したことをクラスの皆に前で発表。
クラスメイトの死がクラスメイトの"本当の心"をあぶり出していく。
由紀ちゃん
由紀ちゃんはあたしが死んだとき泣いてなかったね
クラスメイトの誰もが自分でも気づかないうちに自分を抑圧して生きていた。クラスに馴染むようなキャラを知らないうちに自分で作りだして抜け出せなくなる。
由紀は誰とでも仲良くなれる、波風立てず平和な日常を作れる。だけど、本当の自分の気持ち。「あなたはどうなの?」には答えられずにいた。それでもヘラヘラしながら自分の気持ちより"くだらない"ことにしちゃおうとしていた。
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大好きな友達と幼馴染が見つけた虚無な自分にやっと自分自身が辿り着いたラスト。思春期は心的イベント多すぎてストレスやばかったんだろうなぁと振り返って思う。大人になっても心的イベントはあるけど大抵似たようなことを経験済みだから自分なりのQ&Aがあったりする。でも、思春期はすべてが初体験だから衝撃や興奮で感動もすっごいけど逆の反動もすっごい。
でも大人もなかなか悪くないぜえと思うのでした。