《内容》
ろうあの少女が聖母マリアの出現を体験し、突然耳が聞こえ話し出し、病人を治し始めた。少女が起こす奇跡を見ようと大勢の人々が詰めかける中、落ちぶれたジャーナリストは、再起をかけて町で少女を取材する。次々と起き始める奇怪な出来事。奇跡は本当に聖母マリアのなす業なのだろうか。それとも、不吉な何かが潜んでいるのだろうか…。
ホラー映画の中でもオカルト系は格言が多い。特に哲学的な意味で大好きなホラー映画は「イット・フォローズ」。
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「イット・フォローズ」の記事を読む。
日本語で「アンホーリー」だとピンとこないんですけど、原題「The Unholy」だとしっくりくる。聖なるものの否定。
悪は友を装い近づいてくる
牛の怪死の記事のためとある町にやって来た記者・フェン。だが実際に現場に行くと牛は生きている。牧場主は悪魔崇拝者の仕業かもしれない!というが、それは牛の毛が白くMの文字をつけているだけのことだった。メタリカのM。
せっかく田舎町までやってきたのに手ぶらじゃ帰れないフェンは町を散策。すると木の幹に隠すように置かれているチェーンでぐるぐる巻きにされた人形を発見。ついてきた牧場主は「農家のお守りのカーン・ベイビーだ」と説明する。
フェンはここで一つの物語を作り出す。
"古いお守りが壊された時
家畜の怪死が始まった"
これをノンフィクションにするためにフェンは人形を踏みつぶして粉々に壊したのだった。夜、フェンは運転しながら牛の怪死から始まる創作をつぶやいていた。そのとき目の前に白い服の少女が現れ慌ててフェンはハンドルを回しブレーキを踏む。
彼女はアリスという聾唖の少女だった。アリスは伯父のヘイガン神父の教会で突如何者かの声を聴き、自分の声を取り戻す。
インチキをでっちあげようとしていたフェンは聾唖の少女が突如話し出すという”奇跡”を目のあたりにしたことでネタになる実話を手に入れようと彼女に近づく。
アリスはマリアの代弁者となり、両足の麻痺で車椅子に乗っている少年に語り掛けた。すると少年は車椅子から立ち上がった。このことをテレビが大々的に報じたことによちたちまちバンフィールドは奇跡の町になり、アリスは注目の的となった。
奇跡ってのは・・・
奇跡には強い信仰が伴う
悪魔は信仰を破壊することを何より好むものだ
この町に起きたことをスクープし、復帰を狙うフィンは神父にバンフィールドを聖地にしようと持ち掛ける。困っている人々はアリスの力でよくなるし、この町に多くの人がくればそれだけ町の利益につながる。悪い話ではないだろう?というフィンだが、神父はこれらの奇跡が悪魔の策略であることに気付いていた。
"神が教会を建てた横に悪魔が礼拝堂を建てる"
大切な姪を守るためにも聖地化やこれ以上の奇跡を望まない神父だったが、次の"奇跡"の対象者は神父なのだった。
善と悪の闘いは尽きることがない
神のそばには穢れが付きまとう
奇跡が盛り上がる裏側で信じない人間は奇妙な死を遂げていった。フィンはようやく自分が立てたフラグで人の命が奪われていることに気づくが、アリスの報道によって拡散された奇跡は電波に乗り今や全国レベルの信仰を集めていた。
最初に壊したカーン・ベイビー、幸福のお守り。だけどこの人形にはもう一つの意味があった。なぜ鎖につながれていたのか。そしてそこにつけられた存在しないはずの2月31日。よそ者が犯した罪を洗うのはその土地の者である、ということが理不尽ながら正しいこと。
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信仰が篤ければ篤いほど、それが壊された時の絶望も倍になる。それこそが悪魔が一番欲しいもの。信じずには生きられない人間の性の永遠の敵。そう、善と悪の闘いは尽きることがない。