深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】罪の声~やりたい放題やって尻拭いは次の世代にやらせる見慣れた光景~

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《内容》

35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。大日新聞記者の阿久津英士は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。「俺の声だ―」それは、あの未解決事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった!

 

これが実際の答えなんじゃないかと錯覚するような作品。実際は未解決で真相は藪の中。"罪の声"の本人たちに全く罪はないのに罪を背負わされたことで事件を背負うこととなる。

 

引き継がれた罪

 テーラーの曽根(星野源)は自分の店を持ち、妻と娘と母親の4人で暮らしていた。ある日、クリスマスツリーの電飾を探すため押し入れを探っていると父の光雄と書かれた箱を発見する。その箱の中には父との思い出のおもちゃと他に「1984年」と書かれたカセットテープ英語で書かれた手帳が入っていた。

 

 懐かしい気持ちでカセットテープを再生すると幼い頃の自分の歌声や、父との会話が記録されていた。うっかりと笑みをこぼしてしまう曽根だったが、途中なぞの声に切り替わる。

 

 さっきの歌声と同様、自分の声ではあったが何かを示唆するような謎の暗号のような言葉をしゃべっている。不穏なもの感じた曽根は一緒に入っていた手帳を見る。そこから読み取れた「GINGA」「MANDO」をインターネットで検索すると、ギンガ・萬堂事件と言う記事が1件目にヒットする。クリックしてみると、それは未解決事件子供の声が使われたと書かれていた。

 

 自然と曽根の呼吸は荒くなり、クリックする手が震えていた。検索結果の2件目を飛ばし読み、3件目をクリックしたとき、そこに子供の音声が載っていた。

 それはさきほどの自分の声。

 

きょうとへ むかって、1ごうせんを 2きろ
ばすてい じょうなんぐうの、べんちの こしかけの、うら

 

 脅迫に使われたものとしてネットに上がっている声は幼い頃の自分が発したものだった。これを録音したのは誰なのか?今は亡き父はどんな人だったのか、曽根のルーツを探る旅が始まる。

 一方、小栗旬演じる大日新聞大阪本社の記者・阿久津は未解決事件特集としてギンガ・萬堂事件をもう一度追いかけることなった。事件を追いながら阿久津が目を付けたのは脅迫に使われた3件のカセットテープの声の持ち主のその後の人生だった。

 

 女性の声が1つ、男の子の声が2つ。もしかしたらこの子たちが事件の真相を知っているかもしれない。

 奇しくも同じ時期に同じ事件を追うこととなった曽根と阿久津。二人は事件を通して出会い真相を突き詰めていく。だが、そこで明らかになったのは曽根以外の2人の子供の悲惨な運命であった。

 

私は奮い立ったんです

 

警察に
社会に
日本に

 

見せつけてやったんです

この国がいかに空疎か

 

 学生運動が下火になり過激派だけが残った1984年、新たな人生を歩もうとしていた人物が2人いた。権力に火炎瓶を投げつけても日本は何も変わらなかった。心の燻りに目を閉じて幸せな人生を歩もうとしていた。

 

 しかし、人との出会いがきっかけで二人の心の燻りは大きく輝きだした。警察や社会に対する憎しみが再び蘇ってきた二人は幼い曽根を復讐の道具として使ったのだった。

 

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罪の声

罪の声

  • 小栗旬
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 権力と社会に父を殺された二人の言い分は"正義"であり"許せない"という感情だったが、その二人は逃げ続け捕まったのは3人の子供だった。阿久津の「何が正義やねん!」ってのは観客の代弁だよね。やりたい放題やって尻拭いは次の世代にやらせる構図。見慣れた光景。