深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

我々は、みな孤独である/貴志 祐介~私を殺した人を見つけてくれますか?~

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《内容》

探偵・茶畑徹朗の許にもたらされた、奇妙な依頼。
「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」と言う依頼人・正木栄之介は八十歳に近いが、一代で企業を築き上げた傑物らしく未だ矍鑠としている。
前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子は適当に話を合わせて報酬を得ようとするが、
調査を進めるにつれ、次第に自分たちも前世の記憶としか思えない鮮明な夢を見るようになり──。
鬼才が今描く死生観とは⁉ 未体験、未曾有のエンターテインメント!

 

 貴志さんって、ちょっとチャンドラーっぽさあるんですよねwなんかハードボイルド感あるw探偵なのに肉弾戦したり日本なのに銃撃戦しててちょっと面白かったwあと、新世界より、とかからも分かるようにちょっとSFちっくというかファンタジー要素というか、ハードボイルドなのになんか非現実的な不思議さがあるんですよね。

「新世界より」の記事を読む。

 私は大好きなんですけど、単純にミステリーが好きな人は違うかもしれません。

 

私を殺した人を見つけてくれますか?

いや、生きとるやないかーい!というのは置いておいて。

 主人公は私立探偵の茶畑徹朗。お金がなくて困っているところに、大企業の会長・正木から破格の依頼を受ける。それは自分を殺した人間とその理由を見つけて欲しい、というなんとも現実味のない依頼であった。

 

 つまり前世の記憶であり、前世で自分を殺した人間もまた今の時代に同じように転生し同じように自分を殺そうとしているので見つけて欲しい、というのが本筋なのだが、そんなことを言われても前世の記憶(という名の会長が見た夢の話)などいつの時代の話かも分からないし解決する見込みはない。

 

 だが、最近バックれたバイトが薬の売人かつ事務所のお金をすべて持ち逃げした挙句雇い主だっただけなのにそのスジからも金銭を要求されている徹郎はこの意味不明な依頼に金欲しさで着手する。

 

 しかしなぜ老人は前世などということを言いだしたのか?その裏には怪しい占い師の存在があった。

 

 合理的な説明は、ただ一つしか思いつかなかった。催眠術などの暗示によって、正木氏は、このストーリーを植え付けられたに違いない。

 それをやったとおぼしき人間は、天眼院浄明なる占い師以外に考えられなかった。

 

 前世が見えるという占い師に会いに行った徹朗はそこで前世や霊視について以外に「生まれ変わり」について話を聞く。輪廻転生するにしても数が合わない、そういう徹郎の問いに天眼院浄明は知らない方がいいこともあると口を噤んだ。

 

 徹郎は気になりながらもヤクザとの約束の時間もあり、正木氏の依頼を遂行することを最優先に進めていった。しかし正木は新たな前世の記憶も語りだし、徹郎はもう一つの前世と共に自らの前世についても考えだす。

 その一方で裏側の世界もことを進めていた。拉致したり拉致されたりしながら徹郎はある一つの考えに辿り着く。

 

ご存じとは思いますが、現在、東京都内ではテロのような犯罪組織同士の抗争が吹き荒れています。私は、その真っ只中に巻き込まれてしまっています。もはや、明日をも知れぬ命と言っていいでしょう。しかし、死ぬ前に何として知っておきたい。ここしばらくの間に私の身に起きたことは、いったい何だったのかを。私が調査していた、前世の記憶のような幻影の正体は、何なのか。そもそも、前世というものは、本当に存在するのかを

 

 天眼院浄明は深淵を除き精神を壊した。そして徹郎は天眼院浄明と関連のある賀茂禮子に真実を問う。そして日常に戻るのだが、深淵を除く前の徹郎と今の徹郎では何かが変わっていた。

 

 この物語に求めるのが「依頼人を殺したのは誰か?」というものであればあまりスカっとした話ではない。不思議なのだが、「依頼人を殺したのは誰か?」はあくまで客寄せの主題であって本題は「自分とは何か」なのだ。こんなんアリ?と思いながらどんどん考えが飛び散っていくのは、賀茂禮子が語る真実とリンクする。

 なぜか秘書の毬子とのエロいシーンがあったりして、ハードボイルドとセクシーシーンを忘れない貴志先生、いくら内容がスピリチュアルによってもエンタメなのはこれがあるからなんだよな、と思うのでした。