深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】夜のあぐら 〜姉と弟と私〜/家族も維持する努力が必要

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《内容》

日々を漫然と暮らす秋子(井上真央)。ある日、姉・春子(尾野真千子)から、ひきこもりの弟・雪雄(村上虹郎)とともに、父の遺産を「愛人」から守るために戦おうと持ちかけられる。

 

なんも知らずに見たけど、すごくよかった。

父の遺産を「愛人」から守る子供たち、っていう構図がすでにコメディちっくなんだけど、秋子と春子の掛け合いも面白い。だけど、終盤には離婚したときに失ったものを未だに覚えている小さな秋子が出てきて、静かに切なくなりました。

 

家族も維持する努力が必要

 離婚した父親の死期が迫ったことで、社長だった父親の遺産を後妻に渡すまいと兄弟に招集をかけた姉の春子。高校中退のあと引きこもりになった弟の雪雄。ピアノ講師を辞めてパチンコ屋で働く秋子は弟の面倒を見つつ、姉の暴走に付き合い、自分は一歩引いた場所にいると思っていたが、父の遺産をめぐるうちに言えなかった言葉が秋子の中から静かにこぼれだしていく…

 

しがみつかなきゃ家族なんてあっという間になくなっちゃうのよ

 

あたしはね、お母さんのことずっとバカだと思ってた
お母さんがあんな変な意地張んなきゃあたしたちは家族でいられた

 

なのにお母さんさっさと離婚して
慰謝料もらわないで
バカだよ バカ

 

 父の不倫がきっかけで両親が離婚することになり、離れ離れになった三兄弟。長女と三男は父につき、次女だけが母について他県へと引っ越すことになった。次女の秋子は父に愛されていないと思っていたが、実は毎年母が作っていたと思っていた枇杷のジャムは父が秋子のために作っていたものだということを父の死後に知る。

 

 最後に父と兄弟と別れるときに父に欲しいものは?と聞かれ、ピアノと答えたいけれど、母の顔色を窺ってピアノの代わりに枇杷と言ったのだ。

 

 どこか冷めている秋子は、父の残した家という遺産にしがみつく姉に、「自分の家庭がうまくいっていないからっておかしい」と言う。だが、姉は姉で離婚して壊れた家族を思い、家族とは自然現象ではなく家族という名で結ばれた人たちが作り上げ、保ち続けなければならないのだという考えを持っていた。

 

 

あたし、不倫しそうな男 顔で分かるから。

 

 秋子は職場内不倫で会社をクビになった。そして姉の夫が不倫しているのかもしれないという悩みにはこう、答えるのだ。

 

 つまり、秋子は不倫しそうな男=父親に似ている人を無意識にずっと探していたということでしょう。

 

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原作↓

 自分の気持ちって意外と気付かない。それが静かに浮かんでくるこの映画は、観ていてとても暖かかったです。