《内容》
自由と孤独しか愛せない男、その男を愛してしまった女…。アフリカの広大なサバンナに生きた女性の、愛と冒険のトゥルー・ストーリー。
1885年にスウェーデンで生まれたカレン・ブリクセンの自叙伝を映画にしたもの。父方のスウェーデン貴族・ブロルと結婚した彼女は酪農をするためアフリカに移住するが、彼女を待っていたのは、孤独と哀しみの連続であった。
カレンの生き方、私は大好き。
信念を貫く
カレンは酪農をするという名目で母から資金をもらい、その資金あってこそブロルと結婚したのだ。金欠だったブロルに必要なのは金で、カレンにとって必要なのは生まれ故郷を離れるための口実だった。お互いwin-winだよね、という打算的な結婚ではあった。
しかし、カレンがケニアに到着するとブロルは酪農ではなくコーヒー栽培に変更すると勝手なことを言いだした挙句、カレンが聞いていないというとへそを曲げてカレンを置いて狩りに出てしまう。
スマホも何もない時代、ブロルがいつ帰ってくるかというと「雨が降ったら」なんていう。友達もいないアフリカの大草原の中に一人残されたカレン。
絶望するが、カレンは1人この地を散策し始める。そこで出会ったのが後に恋人となるデニスであった。
カレン 僕が君といるのは僕自身がそう望んだからだ
誰にも左右されたくない
自由に生きたいんだ
その結果 孤独に死んでもかまわない
代償は払う
君への気持ちは"紙1枚"で変わりはしないよ
ブロルとの離婚が決まり、デニスと結婚したいというカレンに対してデニスは結婚はしたくないという。舞台は1913年である。女性ならば結婚するというのが当たり前の時代だろう。
カレンはブロルの指示で、ソマリ族を従えて戦地に食料を届けに行ったり、ソマリ族の寺子屋を作ったり、コーヒー栽培は自分も実際に参加し手作りの工場も建てて収穫もできたが、何の不運か火事で全焼してしまう。
ブロルとの性行為で梅毒にかかり実家に戻り治療に専念した時もあった。(この時代の梅毒は不治の病だった)梅毒の治療によって不妊になったカレン。愛するデニスは結婚を拒否し、子供もいないカレンにとって自分の子供のように感じていたソマリ族の子供たちとも、コーヒー園の全焼により永遠のお別れとなってしまう。
この映画、特に音楽が素晴らしいし映像は古いけれどすごく豊かなんですね。160分もあるので、一つ一つの出来事が丁寧に描かれている。だけどそれを長いとも感じさせないほど音楽とストーリーが惹きつけてくる。
今の時代なら結婚しなくても好きならいいよね、で通じますが、この時代に女性一人で生きるのはとてもじゃないけれど寂しかったのではないかな、と思います。女性にとって結婚も妊娠も当たり前だった時代にその両方を手にできなかったということについては特に書かれていませんが、別にデニスを紙一枚で縛り付けたかったのではなく、ただ安心したかっただけなんじゃないかなぁと思うのですね。
結局デニスは自分の言葉通り代償を払う。まさにケニアはカレンにとって愛と哀しみの果てなのですね。
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カレンが戦地に向かうシーンと、デニスに河で髪を洗ってもらうシーンが個人的に超好きです。馬に乗り慣れていないのに何日も馬に乗って遠く離れた戦地に向かうカレン。頼れるのは自分だけ。ソマリ族を導き、さらに地図もなく土地勘もない場所で、引き連れた彼らを迷わせることもできないし、道を聞くこともできない。こんな愛と勇気がある人に私もなりたい、と思いました。