《内容》
死後10年を経て再発見された、奇跡の作家。
大反響の初邦訳作品集、ついに文庫化!
2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位
第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位
毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
道路の舗装材を友だちの名前みたいだと感じてしまう、独りぼっちの少女(「マカダム」)。
波乱万丈の人生から紡いだ鮮やかな言葉で、本国アメリカで衝撃を与えた奇跡の作家。
大反響を呼んだ初の邦訳短編集。
開いてびっくり。24編も入ってる。
なんだかお得感。タイトル「掃除婦のための手引き書」はもちろん、他にも冒頭の「エンジェル・コインランドリー」「いいと悪い」もよみごたえ抜群です。
なんかおしゃれだし、辛いことや苦しいことをクスっと笑えるような、茶化すような、そういう表現なので軽く読めるのです。
「どうにもならない」は本人の実体験なのか、アル中な母親のどうしようもない姿をポップに書いている。めっちゃ重く書くこともできるけど、太宰治的な道化心理というべきかサービス精神というべきか、読み手が暗くならないようなバランスで描かれている。
一遍がそこまで長くないので、一日一遍寝る前に読む。として読んでました。
掃除婦のための手引き書
ターはバークレーのゴミ捨て場に似ていた。あのゴミ捨て場に行くバスがあればいいのに。ニューメキシコが恋しくなると、二人でよくあそこに行った。殺風景で吹きっさらしで、カモメが砂漠のヨダカみたいに舞っている。どっちを向いても、上を見ても、空がある。ゴミのトラックがもうもうと土埃をあげてごとごと過ぎる。灰色の恐竜だ。
ター。あんたが死んでるなんて、耐えられない。でもあんただってきっとわかってるはずね。
語り手の”私”は、つい最近アル中の夫に死なれて育ち盛りの4人の子供がいる掃除婦だ。掃除婦たちのへのアドバイスという名の忠告を聞きながら仕事をもらう。いくつかの仕事先での些細な出来事が死んだ夫のターを思い出させ、自分を死にたくさせる。
だが、人の家の中で生まれる些細なハプニングで「まだ死にたくない」と思ったりする。そういう生と死のはざまにいる掃除婦を描いたのが本作だ。
死んだ夫に会いたくなった場所がゴミ捨て場なんてところがめっちゃハードボイルドでかっこよすぎる。
綺麗に飾り付けたり、変に野暮ったくもしない、自然体というかシンプルなこの作品が私は好きです。
映画化するみたいで、それもめっちゃ楽しみです。