深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】落下の解剖学〜真実は見つけるのではなく創るもの〜

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《内容》

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが―。

 

 タイトルからミステリーなのかな〜って思ってたら、

こりゃあ藪の中ですわ。。。

 となりましたね。

 

 先に言うとこの事件に真実はありません。

 

真実は見つけるのではなく創るもの

 

事実かどうかは関係ないんだ

問題は君が人の目にどう映るかだ

 

今大事なのは君の周りに味方がいるかどうか

 

 

何かを判断するのに材料が足りないと判断のしようがない

だから決めるしかない

分かる?

たとえ疑いがあっても一方に決めるのよ

判断しかねる選択肢が2つある場合1つを選ばないと

 

心を決めるの

”フリ”じゃない

 

 主人公はベストセラー作家のサンドラ。彼女が自宅一階で大学生のインタビューを受けていると、二階からバカデカい音量で音楽が鳴り出す。作業中の夫のせいよ、とサンドラは笑い、インタビューを続けようとするが、リピートする音楽にリスケしようとインタビューは中断。

 大学生が帰った後、一人息子のダニエルは愛犬と散歩に行った帰り道、雪の上で血を流して倒れている父親を見つけるのだった。

 

 死体解剖からのコメントと現場検証の結果、サンドラは夫殺害の容疑で裁判にかけられる。そこで、作家志望だった夫密かに録音していたサンドラとの夫婦喧嘩の音声を証拠として出されるが、サンドラ側は自殺の際にサンドラに罪を着せるための事前工作の可能性を否定することはできない、と反論する。

 

 キーパーソンは視覚障害と闘いながら生きる息子のダニエルだ。

 ダニエルが視覚障害になったきっかけを作った父親は、贖罪からダニエルの面倒をよく見ていた。つまり、ダニエルにとっては母親よりも父親の方が大切だったかも知れない。母が父を殺したのかも知れない。それはもう誰にも分からない。

 そんな中でダニエルは決めなければいけない。

 母が父を殺した可能性に賭けるのか、父が自殺した可能性に賭けるのか。

落下の解剖学(字幕/吹替)

落下の解剖学(字幕/吹替)

  • ザンドラ・ヒュラー
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 ダニエルが父が自殺したのだと真実を創った時、そこにはいろんな感情があったと思う。それは真実ではなく未来。母が父を殺したとなれば、ダニエルは被害者であり加害者の息子になる。父が自殺したならば、ダニエルは遺族になるだけで法廷とは縁を切れるのだ。

 

 もしも未来が選べるのなら、多くの人が真実を創るのではなかろうか。そんなように思った映画でした。