《内容》
蛇の舌、顔中のピアス、そして背中に龍の刺青を入れた男・アマ(高良健吾)と出会い、付き合うようになった19歳のルイ(吉高由里子)。だが一方で、ルイは彼の紹介で出会ったサディスト彫り師・シバ(ARATA)とも関係を持ち始める。自らの舌にピアスをあけ、背中に龍と麒麟の刺青を彫り、突き動かされるように身体改造にひた走るルイ。そして2人の男の、2種の愛を受け、痛みと快楽に身を委ねていくが、ある日アマの起こした事件がきっかけで、3人の運命は思いもよらぬ結末を迎える・・・。
最初、マジで電車の中で見なくてよかった…って思って、途中、私はなぜこんなエロい映画を見てるのだ…?ってなって最後大号泣した。
まさかこんなに食らうとは思わなかったんだけど、さすが芥川賞、さすが金原ひとみって思った。これは色褪せない名作だ。(なんで今まで見なかったんだ)
私を殺したい男、私を殺してくれる男
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死にたい女ルイに対し、彼氏のアマはルイ自身にだって殺させない。ルイをどうにかできるのは自分でありたいから、死にたいなら俺に殺させて、と言う。
対して、彫り師のシバはルイの苦しそうな顔に興奮するといい、殺したくなったらどうしよう、とルイに言う。
一般的には意味不明なやり取りで不穏さかもしくは痛さしかない三人の関係なのですが、これが成り立つのがルイが受身な人間だというところです。
ルイは一人でいることが無理なのです。生きている、ということを痛みや他人を通してしか感じられない。だから、アマが死んでしまった時もシバといた。アマがいなくなって泣いて痩せて生きることを放棄するように自堕落に拍車をかけても、アマを殺したのがシバだと分かったら怒りも消えてしまう。
無かったことにして、もう一人の殺してくれる男のそばにいることを選ぶ。
生きるのが苦しくて苦しくて、意識があることが辛くて何も考えたくなくて発作的に飲んでしまうお酒。
背中に彫った龍と麒麟がいつか飛んでいなくなってしまうと思うのは、アマの名前も家族のことも何も知らないままの関係性が生んだ感情。でも、シバはヤバいやつだけど、警察やバイト先や家族、とにかく社会と自分を繋げてくれる。だからもうシバといれば失うものなんてないのだ。
大人になればなるほど救いのなさが身に沁みる。どうかルイが笑っていますように。