《内容》
挙式を控え、忘れられない従兄賢治と一夜を過ごした直子。出口のない男女の行きつく先は?不確実な世界の極限の愛を描く恋愛小説。
昔映画を見たんだけど、なんかずっとセックスしてるだけ、っていう印象しか残らなかった。いや、んなわけあるかい!って思って小説を読んでみることにした。
小説の中でもセックスばかりしてるわけだけど、なんていうかやっぱり男の人が書く恋愛と女の人が書く恋愛って違うんだな、っとことが一番感じたことでした。
セックスが僕らに何をもたらすか
この五日間、夢みたいに楽しかった、と直子は書いていた。
彼女自身がそう言ったのだからきっとそうだったのだろう。
では、翻って俺はどうだったか?
直子と再会し、セックス三昧の日々を送ったこの数日は夢みたいに楽しかっただろうか?
主人公・賢治は従兄弟の直子の結婚式を理由に帰省していた。式場以外で会う気はなかったが、賢治の家にフラっと寄った直子に会ってしまったが最後、二人は直子の夫が帰るまでセックス三昧することとなるのだった。
九州出身の二人。
直子のはじめての相手である賢治は先に東京に出ており、それを直子が追いかける形で二人の関係は始まった。別に付き合っているわけではないし、お互い相手がいても関係ない、いわゆる都合の良い関係だった。
だけど、だからこそ、なのか、従兄弟という血のせいなのか、二人はお互い以上に相性の合う人と出会うことはなかった。
賢治は結婚しても不倫して全てを失い、直子は賢治を好きなまま別の相手と結婚する道を選ぶが、すでにこの道の破滅は予感されている。
俺は先のことを忘れてしまいたくて直子とのセックスに溺れ、直子もまた先のことも過去のことも忘れてしまいたくて俺とのセックスに溺れた。ただ俺も直子もそれが「いまだけ」だからこそ、そんな大胆な真似ができたのだ。
人は皆、「いまだけ」を生きることはできない。
「いま」つまり「現在」は過去と未来の中間であって、それだけで独立することはできない。だから、人は「いま」を犠牲にする。素晴らしい未来は「いま」を犠牲にすることで成り立ち、わたしたちは未来に向かって生きているから。
でもじゃあ未来がなかったら?
もし富士山が噴火して全てがSTOPするなら「いま」を犠牲にする必要があるだろうか?
ギリギリのラインにいる二人がいる場所は火口。そこでは未来は不確かすぎて、二人は「いま」を生きることができる。
セックスが意味するものとは「いま」なのだ。