《内容》
大人にしか、わからない世界がある。上海、NY、東京、ワールドエンド……いまもどこかで男女がくっつき、繋がりあっている。地球規模の恋愛・関係小説。
何もないことを書く、という独特な作家さんだなぁ〜と思う。
読みやすいけれど、独特。不思議な感じ。
生産性がなくてもいいじゃない
慧眼……マレーシアで第二の人生を歩む子供のいない中年夫婦の話。
みんなして人間ごっこ、お疲れさまです、そんなことを、頭の中で考える。
スカートのすそをふんで歩く女……男の子といる方が好きな女の子の話。
東京に帰ったら、献血をして、それから骨髄バンクに登録しよう。セックスしなくても、みんなと繋がれる。
邂逅……中国ファンタジー。出張で上海にやってきた僕は、とても美しく若い社長を好きになってしまう。男同士という生産性のない世界でも僕と社長はお姉さんを通してつながる。
髪はくしゃくしゃのテンパなのに、目は冷たい一重まぶた、それでいて口元は愛らしく今にも笑い出しそうであった。僕と社長とお姉さんで作った、三人の子どもだ。
膨張する話……若い高校生カップルの話。僕たちはまだセックスをしていない。
セックスなんて本当はみんな、やりたくてやってるわけじゃないんじゃねえの?
何かの謎に近づく方法で、一番手っ取り早いのがセックス、そんな感じ。
男と点と線……大好きな幼馴染を大好きだと自覚して、その気持ちを大事にしようとする話。
ジャズを気持ち良いと感じることのできる自分の感受性が、ギフトのようだ。
この耳こそが、神様がくれた蜜。
何かを成すことばかりが素晴らしいのではない、感じるだけで、素晴らしいのだ。
物語の完結……女子二人で旅行に行く話。
私たちは、一頭と一羽の関係性に見入った。馬が二頭並んでいるのとは違う。鳥が二羽止まっているのとは別だ。馬は背中を重く感じないのだろうか? 鳥は足の裏を温かく思わないのだろうか? 永遠にセックスすることのない、このカップルは、どこへ向かうのだろうか?
この作品、セックスと言いながら、男女関係を書いておきながら、セックスはしないのだ。むしろ、セックスしなくたって、なんならただそばにいるだけで、それだけで繋がることができるよね?
私たちの普段、日常って、そんなに断絶されていなくて、実は結構簡単にあっさりと繋がれるよね?その程度の繋がりだっていいじゃない。
そんな肯定を感じる不思議な短編集でした。