《内容》
気鋭の哲学者が放つ、疾走感あふれる青春小説。
野間文芸新人賞受賞!
2001年の春、現代思想を学ぶ「僕」は、大学院修士課程に進んだ。友人の映画制作を手伝い、親友と深夜のドライブに出かけ、家族への愛と葛藤に傷つき、行きずりの男たちと関係を持つ日々。そんななか、書きあぐねている修士論文のデッドラインが迫ってくる――。芥川賞候補となった気鋭の哲学者による初小説が、待望の文庫化!
おお〜無理なやつだった。
内容や表現ではなくて、突然シーンが変わったり、別の話になったりして、それについていけなかった。
評価が良かったので、そこをするり、とすすめないのは自分だけなのかもしれない。
こういう無理は初めてで、逆に興味を持って読んだけど、難しかった。
デッドライン
なんでこんなイケメンが女と付き合うんだろうと不思議な気持ちになる。こんなにイケメンならイケメン同士で付き合えるだろうに。ゲイは数が少ないのだという実感がなかった。街で見かける男のほとんどがノンケだなんて、嘘みたいに感じる。この無数の男たちが女しか好きにならないなんて、僕を騙すための壮大なドッキリなんじゃないかと思う。
主人公は大学院生で修士論文に追われていた。哲学の講義を受け、論文を書く一方で、とある場所へ行く。
そこでは男たちが回遊魚のように循環している。気になる男の太ももに手を置く。だけど、それはもちろん断られる可能性だってある。
しかしそこに何もないわけではなかった。そこで出会った後、もう一度会った男だっていた。それでも僕は関係を進めようとはしなかった。肉体関係以上の関わりを避けながらそれ以上を求める僕を掘り下げて書いたのがこの作品だ。
彼女への欲望は、彼女をどうしたいということだったのだろう。抱く、というより、その身体に行く、その身体という場にイク。ある距離が間にあって、彼女に対して射精するのではない。たとえ挿入するのだとしても、変な言い方だが、挿入側として挿入するのではない。「挿入側として」という分離なしで、彼女の身体への一致として挿入する、のかもしれない。それは、言い換えれば「彼女になる」ことなのではないだろうか。彼女になって、彼女自身が自らに挿入してイクような状態ではないだろうか。
僕は一度好きかもしれないと思った女子のことを思い出す。彼女を想像してした自慰のことを。
つまり、性交において自己を保つためには女とやれない。ということなのだろうと思う。女とやることはつまり、女と同化することで、一時的に自己を失うことである。女とやることは、アイデンティティの喪失であり死なのだろう。
めちゃくちゃ難しい!