《内容》
行きつけのバー、年下の恋人、故郷の家族と友人たち……。
かけがえのない日々を描き、芥川賞候補となった傑作恋愛小説。
川端賞受賞の名短篇「マジックミラー」併録。
「新書大賞2023」受賞『現代思想入門』の著者による文学の最前線。
デッドラインよりは易しい気がしました。
そして、デッドラインの続きかな?という感じ。
関係性をすすめる一歩
僕はどこで死ぬことになるのか? そのときに誰かがそばにいるのか?
今は晴人がいる。何のゴールもないこの二人は、それぞれの死に至る時間を愛撫でごまかし合っている。いつかは死ぬ。それでも、スカイダイビングで手をつなぐように落下速度は減速できるだろう。いや減速しかできないのだ。激戦地にパラシュートで兵隊が投下された。男が二人で生きるとは、共に、少し遅めに落ちて行くことだ。
主人公の僕は大学の助教授となり、年下の恋人・晴人がいる。だけど、晴人に本心を言えるわけもなく、「とまれば?」の一言だって言えない。断られるのが怖いから。
京都の大学が勤務地のため、東京から大阪へと引っ越した。慣れない土地でこなす仕事や一から作る人間関係があった。
僕は恋人がいながら男を買い、女と祭りに出掛かる晴人にキレるのだ。
この矛盾ともどかしさ、バカになれず、悶々と一人で思考の闇に堕ちていくのがこの物語なのだが、最後は爽やかな終わりでほっこり。
高速道路らしきまっすぐに続く道に入って加速しているが、料金所がないな、と僕は言う。料金所はだいぶ先なんだよ、とテツが教えてくれる。じゃあ料金所までのこの道は、この時間は何なのだろう、高速なのか? あるいは一般道の延長なのか? とモヤモヤしていて、次第に山が始まって道は紺色に沈む谷間を貫いていき、確かにかなり行ってから料金所が現れて通過したので、それからはやっと気兼ねなく走れる。
こんなこと思うんだ!!と衝撃だった。と同時にいろんなものに意味づけや定義がないと不安なのかな? だからこれだけのものが書けるのかな?と思いました。