深夜図書

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悪の教典/貴志祐介~I'm my teacher's pet~

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≪内容≫

晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

 

ピカレスクロマンとは主人公が悪者の物語らしいです。

最初に映画で観てしまったので面白味は欠けましたが、映画はほんの一節だったんだなーと思いました。小説はやはり詰まってますね。もっと殺されてます。あとエロイ。

映画を観たのが多分DVD出てすぐぐらいだったので記憶が曖昧ですが、伊藤英明のハスミンかっこ良かったなーと今でも覚えてます。海猿の真面目な好青年よりマッチしてて私の中で伊藤さんの好感度がグッと上がりました。笑

俳優さんは毒のある役がハマった時ほど魅力が上がります。

悪人の妻夫木くんしかり。

女優さんはやっぱり可愛い人が好きです。「俺物語」の永野芽郁ちゃんがほんっとーに可愛くて大好きなので「ピーチガール」の悪女さえちゃんを演じてほしくない・・・!と密かに思っています。

 

貴志先生のあだ名センス

貴志先生大好きです。「極悪鳥になる夢を見る」でもすごくわかるんですけど、何か「ふっ・・・ふふっ」って笑ってしまう所があるんですよ。極悪鳥~ではスッポンの話しとか。高校生のお話なので、生徒が先生にあだ名をつけて呼んだり影口に使ったりしてるんですが、それがナイス過ぎるというか。

 

蓮実聖司・・・ハスミン

釣井正信・・・ツリー

猫山祟・・・猫祟り(ねこたたり)

高塚陽二・・・ヘビメタ(ヘビーメタボリックの略)

 

ありそうwwwwと思いながら読んでました。特に猫祟りとか。「新世界より」でも「ネコダマシ」や「ヒトモドキ」など言葉の意味とリズムの合わせ方がすごく自然なので入りやすいです。

動物の名前も女の子がつけたのは「ショコラ」や「ジャスミン」という今時という感じで、男性がつけたのは「ゴン」ww

先生は、何故そんなに男女の感性の違いがわかるのでしょう?ハスミンと女生徒のやらしーシーンとか養護教諭と男子生徒とのやらしーシーンの会話も自然です。先生は男性なのにどうして女性の描写が上手いんだー!!!!こうゆうの感じると小説家ってモテそう・・・と思うんですが、実際どうなんですかね?でも太宰治とかモテてるし、やっぱ人の心理をわかってる人ってモテるんでしょうね。(脱線)

 

I'm my teacher's pet

これはハスミンが淫行中に女生徒の美彌に言わせるのですが、これはハスミンだけでなくこの学校の先生(クズ)の生徒に対しての評価だと思います。

とりあえず、この学校の先生は基本クズです。

 

  • 校長・・・ツリーの奥さんと不倫。それをツリーに強請られツリーの言いなり。
  • ツリー・・・奥さんを撲殺。校長に埋めさせる。人の弱みを握り、破滅させる。
  • 柴原・・・体育教師、強者に媚び、彌の万引きを目撃しセクハラを行う。
  • 園田・・・生徒指導。行き過ぎた体罰行為。暴力は正義の為に必要との考え。
  • 田浦・・・養護教諭。男子生徒と保健室でイチャコラ。ハスミンとは仲良し。
  • 猫山・・・動物の死骸の骨をコレクションしてる。お気に入りは入歯洗浄液。
  • 久米・・・美術講師。同性愛者の男子生徒を絵の中の深層心理から探し出し交際。
  • ハスミン・・・周りの信頼を得るのが得意な人たらし。殺人は問題解決の最短ルート。

え?こんなクズの集まる学校ある?類友ってヤツですか?

先生達はとりあえず教師やってますが、私利私欲が上回っています。

修学旅行では生徒たちから集めたお金で自分達は高級料理に舌鼓。世の中、汚い大人はたくさんいるので、いち早く汚い世界を教えるという意味合いなら最高に模範的な大人たちです。

しかもハスミンは修学旅行のホテルの最上階に彌を呼び出し行為へ及ぶ大胆っぷり。

ハスミン学校の屋上でもキスしてるし、計算高い割に注意力は性欲を上回らなかったんでしょうか。

貴志先生をすごいと思ったのは、ハスミンが彌にとってすごく魅力的に映るような描写が私の中でもとっても魅力的だったからです。

 

ハスミン大人の男の6カ条

  • セクハラの最中に助けに来てくれた。万引きも一緒に謝ってくれた。
  • いつもは軽トラなのにデートではポルシェで登場
  • めっちゃかっこいいマンション。自宅で宅配ディナー。ワイン。
  • 拾った猫をマンションで飼ってくれる。
  • 「私は先生のお気に入りです」って言ってごらん・・・という言葉攻め。
  • 修学旅行中にホテルの最上階(スイート)に呼び出すという特別扱い。

これは思春期の女の子は結構グラっとくるんじゃないでしょうか。

特にちょっと突っ張ってる女の子。彌の家庭環境について多くは書かれてませんが、何度も友達と外泊している描写があります。

自分の居場所が不安定な思春期の大人でも子供でもない女の子にとって、大人の男性というのはすごく憧れの存在でもあるんですね。

自分を守ってくれる存在。車、一人暮らし、ディナーという同世代には持ち得ない経済力。それ故に自分のわがままを叶えてくれる包容力。自分が他人よりも幸せなんだと、愛されているんだと思える扱い。

まぁ、「私は先生のお気に入りです」って言ってごらん・・・という下りは、ハスミン英語教師なので英語で言ってごらんと言うのですが、彌が「favorite student」と答えたのに対し「teacher's pet」と訂正して言わせます。

彌が自分を学生(student)と感じているのに対し、ハスミンは愛玩動物(pet)と言うのはよく考えれば自分を愛していないことに気付けます。

でも、誰からも好かれて親衛隊がいるほど人気の明るくて優しいハスミンが、ベットの上ではドSでペットとか言っちゃうちょっと黒い部分がある事を初めて知ったら・・・

そこのギャップまで計算してるんですかね?ハスミン。

怖い・・・!でも騙されちゃう!!!!

 

ハスミン「私にも殺せない人がいました・・・」

とか言ってませんが。唯一ハスミンが殺せなかった女の子が出てきます。

中学時代に出会った石田憂実ちゃんという女の子です。学習障害があり、勉強は出来ないが共感性だけは人並み外れた女の子。

完璧な善人の仮面を手に入れたと思っていたのに、憂実には自然にバレてしまった。けれど、故にハスミ少年が唯一何の警戒もしないですむ人間となる。

高校進学の時に憂実は世間体を気にする親のススメで就職に。しかし、強制残業の上レイプされ自殺する。自殺する二日前にハスミ少年に殺してほしいと頼むが、何故かハスミ少年は首にかけた手を動かすことが出来なかった。

 

そのあとハスミ少年は憂実をレイプした男を殺します。憂実の代わりに共感能力のテストに付き合って欲しいと言って・・・。

ハスミ少年はこの時憂実を殺せなかったのは「一時の気の迷い」としていますが、これまで憂実に出会うまで何人も殺してきて両親まで殺したハスミ少年です。

憂実がハスミ少年といた期間のハスミ少年は誰も殺していません。

憂実がハスミ少年の殺人衝動のストッパーであった事は明らかです。

彌を殺す時も憂実が現れハスミンを少し引き止めます。

私はハスミンにとって憂実は自分が絶対に手にする事の出来ないものを持ってるもう一人の自分・・・みたいな存在だったのではないかなと思っています。

感情性というものをもたないまま生まれたハスミンと感情性以外のものがほとんどこぼれてる憂実は二人で生きていければ普通の一人の人間になれたのでは・・・と思います。

 

サイコパスとは

貴志先生の作品は「黒い家」でもおなじみ「サイコパス」が出てきます。私達はサイコパスって聞くとヤバイ人と思うと思いますが、先生はインタビューでこう仰っています。

サイコパスといわれる人すべてが犯罪者になるわけではなく、むしろほとんどがならないんですね。普通に社会生活を送れますし、知能が高い人もいる。ただ、共感能力が低いというだけなのです。例えば、戦国時代であれば英雄になっていたりするわけです。成功者として生涯を終わる人もたくさんいる。

えっそうなの!?と思いました。だって、ハスミンとか黒い家のおかんとかもう狂ってるとしか思えないし・・・。こうなってくると肝の共感能力ってなんやねんとなってきます。

きょう‐かん【共感】

[名](スル)他人の意見や感情などにそのとおりだと感じること。また、その気持ち。「共感を覚える」「共感を呼ぶ」「彼の主張に共感する」

コトバンクより

 多分私はサイコパスではないな。当たり前過ぎて逆によく分からない。

というか「共感しよう」と思って共感するのではなく自然に「うんうん、そうだよねぇ

」と思うことが共感でいいんですよね!?

正直、隣でどんなに友達が生理痛で苦しんでいても共感は出来ません。そこまで痛くなった事ないから!でも人間誰でも自分が体験してない事に共感するのは難しくないですか?「辛そうだなぁ、大丈夫かなぁ」は心配ですよね!?

もうよく分かりません・・・。

共感能力が低いってどうゆうこと・・・?

私はよく「冷たいね~」とか言われますが、マンガや小説や、アニメではめっちゃ泣きます。周りが引くぐらい入り込んでます。これはどうゆうこと!?

精神病質(せいしんびょうしつ、英: psychopathy、サイコパシー)とは、反社会的人格の一種を意味する心理学用語であり、主に異常心理学や生物学的精神医学などの分野で使われている。その精神病質者をサイコパス(英: psychopath)と呼ぶ。 wikipediaより

wikiさんによると、何やら前頭葉に関係があるとのこと。でも色々検索してたら家庭環境とか、遺伝子とか何か色々あるらしい。

私が思うのは、これはハスミ少年の様に後天的に覚えていく中でその感情が自分から生まれるようにはならないのかなぁということです。

正直、もっと掘り下げないと全然3分の1も分らないけど、人間は基本分かち合いたいと思う生き物だと思うので、この「共感」という部分がないと必然的に孤独になりますよね。知識がなさ過ぎて全然言葉になりません。

もっと勉強したいと思います。

 

なぜ柴原が山田孝之だったのか

もっと似合いそうな人いそうだけどなーというのが正直なところ。

原作ではもっと下品で救いようのない感じでしたが、映画だとハスミンにショーツ(誰のか不明)を投げつけられ、クンクンし終わった瞬間に銃殺されています。確か。

さすが、笑いを忘れない貴志先生ですね。さすがです。

あと「チーッチッチッチーッチッチ」ってゆうのはアドリブなんですかね?

それとも、歌を口ずさむのは長いという事でリズムだけ刻むことにしたんですかね?

あの映画の後、職場で静かになると誰かが「チーッチッチッチーッチッチ」と小声で囁きだすという現象が起こりましたw

 

それにしても、貴志先生の作品を読むと幅広い知識と情報の多さに感動します。貴志先生に限らずとは分かっていますが、本当に小説家の人って勉強家ですね。

映画を見てからだと、最後の殺し方とか生徒の攻防とかは結果が分かっているのでこうドキドキしながら読むことが出来なかったのですが、やはりそれまでの過程がしっかり書かれているのでオススメです。

 

最後の怜花の片目が濁ったのは?

怜花「圭介は死んでないよね?!」

ハスミン「本当にすまなかった。これは全部神の意志だったんだ、これは皆の魂を救うためにやったことなんだ」

怜花の片目が白くなる

ハスミン「オーディンによろしく伝えてくれ」

雄一郎「こいつ狂ってる」

怜花「ちがう・・・こいつもう次のゲームを始めてるんだ・・・」

チーッチッチッチーッチッチ・・・

という終わりなんですが、映画を見た時はフギンとムギンの神話を知らなかったので全然わかりませんでしたが、これはハスミンの中で学校の教師という仮面から精神異常者の仮面へとチェンジした事を表しているのだと思いました。

オーディンというのは戦争と死の神。そして生き残った二人はフギンとムギン。描かれていませんがハスミンは常に人が納得するシナリオを考えてから行動しています。

ここで瞬時に考えたのは、あの二人がフギンとムギンでクラスの問題を神オーディンに伝えていた、そして自分は担任教師として皆を救うためにオーディンに命じられたのだ・・・といシナリオなのではないでしょうか。

 

小説では彌は一命を取り留めていますがハスミンに関しては黙秘しています。

to be countinue・・・は逃亡したハスミンと彌が幸せに暮らしている中でハスミンが復讐者に狙われ戦う・・・という感じがいいなぁ。

現実世界なら、こんな大量殺戮者が幸せになるなんて絶対嫌だけど何か救いを求めてしまうのでした・・・。

 

悪の教典(上) (文春文庫)

悪の教典(上) (文春文庫)

 
悪の教典(下) (文春文庫)

悪の教典(下) (文春文庫)