深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

書評-戦争

戦争童話集/今江 祥智~生を絶対肯定するのはいつだって戦争の物語だった~

《内容》 「わたし、馬と話ができるのよ…」あのこはそういった。村の遠くでサイレンがなり、高い空に、きれいな鳥みたいな飛行機が、いくつもいくつも町へむかって飛ぶのが見えた。町が空襲にあったのは山あいの村からあのこが消えた夜のことだった。日本が…

水木しげるのラバウル戦記/水木しげる~一致団結とか挙国一致とか、言葉とは希望や願望でしかないのだ~

《内容》 太平洋戦争の激戦地ラバウル。水木二等兵は、その戦闘に一兵卒として送り込まれた。彼は上官に殴られ続ける日々を、それでも楽天的な気持ちで過ごしていた。ある日、部隊は敵の奇襲にあい全滅する。彼は、九死に一生をえるが、片腕を失ってしまう。…

第三の嘘/アゴタ・クリストフ~読書は何かを得る、というより何を持っていないのかということを突きつけてくる。~

≪内容≫ ベルリンの壁の崩壊後、双子の一人が何十年ぶりかに、子どもの頃の思い出の小さな町に戻ってきた。彼は少年時代を思い返しながら、町をさまよい、ずっと以前に別れたままの兄弟をさがし求める。双子の兄弟がついに再会を果たしたとき、明かされる真実…

ふたりの証拠/アゴタ・クリストフ~自分の地獄は人には見えない~

≪内容≫ 戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―…

悪童日記/アゴタ・クリストフ~生きるためにはいい子ちゃんではいられない~

≪内容≫ 戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影…

指の骨/高橋弘希~死んだまま、静かに澄んでいた~

≪内容≫ 太平洋戦争中、南方戦線で負傷した一等兵の私は、激戦の島に建つ臨時第三野戦病院に収容された。最前線に開いた空白のような日々。私は、現地民から不足する食料の調達を試み、病死した戦友眞田の指の骨を形見に預かる。そのうち攻勢に転じた敵軍は軍…

「帰還兵はなぜ自殺するのか」を読んで

≪内容≫ ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦! 本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。 そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。 妻たちは「戦争に行…

ナイン・ストーリーズ/サリンジャー~バナナフィッシュにうってつけの日の謎~

≪内容≫ バナナがどっさり入っているバナナ穴に行儀よく泳いでいき、中に入ると豚みたいにバナナを食べ散らかすバナナフィッシュ。あんまりバナナを食べ過ぎて、バナナ穴から出られなくなりバナナ熱にかかって死んでしまうバナナフィッシュ……グラース家の長兄…

サリンジャー選集(2) 若者たち~理想はリアルからすごく遠い場所~

≪内容≫ ライ麦畑の原型「気ちがいのぼく」やホールデンの兄ヴィンセントの物語も収録。 サリンジャー自身は初期の短編が気にいっていないようですが、個人的には曲がなくて読みやすいのが初期で、わりと好きです。 16編のかんたんな紹介 若者たち・・・パーティ…

戦争と平和/トルストイ~人間の愛で愛していれば、愛から憎悪に移ることがある~

≪内容≫ 19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入という歴史的大事件に際して発揮されたロシア人の民族性を、貴族社会と民衆のありさまを余すところなく描きつくすことを通して謳いあげた一大叙事詩。1805年アウステルリッツの会戦でフランス軍に打ち破られ、もど…

アンネの日記~戦死した人間は、ものすごく生きたかった~

≪内容≫ 1926年、ドイツで裕福なドイツ系ユダヤ人家庭の二女として生まれたアンネはナチスの迫害を逃れ、一家でオランダのアムステルダムに移住。1944年、姉マルゴーの召喚を機に一家で隠れ家生活に入る。ついに1944年、ナチにより連行され、最後はベルゲン=…

夜と霧~涙は苦しむ勇気をもっていることの証~

≪内容≫ 心理学者、強制収容所を体験する-。飾りのないこの原題から、永遠のロングセラーは生まれた。原著の改訂版である1977年版にもとづき、新たな訳者で新編集。人間の偉大と悲惨をあますところなく描く。 したいことの一つがオーロラを見ること。 そして…

海の向こうで戦争が始まる/村上龍~人生が死ぬまでの暇つぶしだと言うなら、究極の暇つぶしは戦争になる~

≪内容≫ 海辺で出会った水着の女は、僕にこう言った。あなたの目に町が映っているわ。その町はゴミに埋もれ、基地をもち、少年たちをたくましく育てる町、そして祭りに沸く町。夏の蜃気楼のような心象風景の裏に貼りつく酷薄の真実を、ゆたかな感性と詩情でと…

総員玉砕せよ!/水木しげる~キレイで刺激的な戦争モノばかり見ても意味ない~

≪内容≫ 昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫…

五分後の世界/村上龍~もしも日本が降伏してなかったら~

≪内容≫ 気づくと、硝煙漂う泥濘を行進していた小田桐……。現在より五分時空のずれた地球では、もう一つの日本が戦後の歴史を刻んでいた。屈指の戦闘国家日本の聖戦を描く、鮮烈なる大長編。 五分遅れた世界では大日本帝国は消滅し、「アンダーグラウンド」と…

卑怯者の島/小林よしのり~私たちの役回りとは~

≪内容≫ 日本人よ、これが戦争だ! 『ゴーマニズム宣言スペシャル戦争論』で戦後日本人の戦争観を覆した小林よしのりが、戦後70周年の節目に、初の戦場ストーリー巨編に挑む。舞台は天皇皇后両陛下も訪問したパラオ・ペリリュー島を想定した南の島。玉砕戦に臨…

虐殺器官/伊藤計劃~目も口も閉じれるけど耳は閉じられない~

≪内容≫ 9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン…