深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【映画】余命10年~あと10年後に死ぬことが決まっていたら何をしたらいいんだろう~

《内容》 数万人に一人という不治の病で余命が10年であることを知った二十歳の茉莉。彼女は生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めて生きていた。そんなとき、同窓会で再会したのは、かつて同級生だった和人。別々の人生を歩んでいた二人は、…

【映画】はるヲうるひと~おとぎ話みたいにキスで呪いが解けたらいいのに~

《内容》とある島。そこは至るところに「置屋」が点在する、いわば売春島。住民たちはこの閉塞された島で一生を過ごす。ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄、次男の得太、長女のいぶき。ここで働く四人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太…

教養としてのアメリカ短篇小説/都甲 幸治~戦争と暴力と人種問題を内包するアメリカ~

《内容》 戦争、奴隷制、禁酒法……背景を理解すれば、作品がもっとよくわかる「黒猫」のプルートはなぜ黒いのか? 書記バートルビーはなぜ「しない方がいい」と思うのか? 度重なる戦争の歴史、色濃く残る奴隷制の「遺産」等、アメリカという国、そこに暮らす人…

プールサイド小景/庄野順三~似ていても同じ家族は一つもない~

《内容》 大金を使い込み、突然会社をクビになった夫。妻が問いただすと、つらい勤めの苦痛や不安を癒すため毎晩のようにバーに通いつめていたという。平凡な中年サラリーマンの家庭に生じた愛の亀裂――日常生活のスケッチを通し、ささやかな幸福がいかに脆く…

赤い蝋燭と人魚/小川未明~芸術は愛から出発するが殊に童話は、子供を愛さなくては書けない。~~

《内容》 人魚の娘が絵を描いた蝋燭には不思議な力があった。しかし、金に心を奪われた老夫婦は、娘を香具師に売ってしまう-。無国籍風の絵をつけ、新しい装いとなった小川未明の代表作。 これ神保町で見つけて装丁がゴシックで可愛くって500円だったので買…

きみの言い訳は最高の芸術/最果タヒ~「あの頃の原宿」は溶けて消えてしまったと気付いた~

《内容》 至極のエッセイ45本に加え、文庫版の「おまけ」9本&「あとがき」を収録。あなたの心の中でうごめく「曖昧な感情」に、「曖昧なまま」そっと寄り添ってくれる沢山の言葉たち―最果タヒ初のエッセイ集が待望の文庫化! 心の中にめちゃくちゃ言葉が渦巻…

十代に共感する奴はみんな嘘つき/最果タヒ~十代にとって世の中は戦場~

《内容》 女子高生の唐坂和葉は17歳。隣のクラスの沢くんへの告白の返事は「まあいいよ」。いつもヘッドフォンをつけていて「ハブられている」クラスメイトの初岡と、沢の会話を聞きながら、いろいろ考える。いじめのこと、恋愛のこと、家族のこと。十代のめ…

遠い声 遠い部屋/カポーティ~大人の世界に何一つ希望を見出せないまま大人に近づいていく恐怖~

《内容》 父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近づきつつある大人の世界を予感して怯えるひとりの少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事に捉えた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーテ…

草の竪琴/カポーティ~草の穂たちはあの丘に眠るすべての人の物語を知っている~

《内容》 両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになっ…

ここから世界が始まる/カポーティ~人生で大切なのは若さでも富でもなく美しいもの~

《内容》 「早熟の天才」はこうして誕生した。グレニッチ高校の文芸誌に掲載された7作を含む、思春期から二十代はじめにかけて執筆された未発表作品14篇をセレクト。出自を隠して白人学校に通う少女、死を目前にした孤独な老婆―社会の外縁に住まう者たちに共…