深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

少女ABCDEFGHIJKLMN/最果タヒ~きみの無視が、きょうからすこし、苦しくって心地いい~

≪内容≫

好き、それだけがすべてです。最果タヒがすべての少女に贈る、本当に本当の「生」の物語!

 

 あとがきより

少女が幸せになる方法を学んでいく時間が、青春であるなんていうのは嘘だ。そんな方法はどうやっても学べない。幸せを切り捨てて行くのが青春で、だからきらきら光って見える。

きみの不幸に突き進んでいく、そのエネルギー。

愛情って言葉はそこに飾られるべきだった。 

 

 

きみは透明性

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きみの無視が、きょうからすこし、苦しくって心地いい。

片思いの始まりの話ですね。

 

透明性とは

透明性。

私には何にも与えてくれない。ただ、さみしさが海みたいに、やってきて、私の心を、砂浜を、飲んで、ちいさな貝殻を置いていく。

私が理解できない、高山の暗さとか、趣味とか、それらを思い返しても、それでも、私の足首は砂の存在を知らせるの。 

 と書かれています。

 

恋ではなくても、一緒にいても何も分からないのに何故か気になってしょうがない人っていますよね。

全然話も合わないし、着てる服の系統も、好きな音楽も、趣味も合わないのに、なぜか気になってしょうがない人。

 

透明の口紅をもらった主人公。

もしも透明の口紅が手に入ったら、好きな人に気付かれずにキスが出来る。

だけど、気付かれないってことは進展しない可能性の方が大きい。

永遠の片思いの始まり始まり。

 

何でもない人から無視されても「?」と思う位で気にとめないけど、それが好きな人だったらまさに「苦しくって心地いい」。

 

恋は一人じゃできないから。

苦しくても、私を苦しめるあなたがいるから恋が出来る。

 

短いけどステキな作品だな、と思いました。

 

 

わたしたちは永遠の裸

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だから保富くんを殺したい、殺して保冨くんを身ごもりたい、産みたい、育った保富くんに恨まれて、悩みながらそれでもやっぱり殺されるってのもいいな、さらには保富くんの子供になって私が生まれる。

家系図を、私たちだけにしよう、愛、家族をこえて愛を。

血をこえて愛を。 

 人を殺すと、殺した人間は、殺された人間をみごもるという都市伝説があった。

女子高に通う二人の女の子のお話。

 

主人公・佐藤原あけみは保富くんが好き。

でも保富くんには秋野さんという彼女がいる。

そして転校生の寒沢さんは、自分は前世で母親に殺されているという。

都市伝説を信じる二人の青春の1ページ。

 

叶わぬ恋をしたならば、前進した先は不幸しかない。

じゃあ不幸の先はもっと不幸なのか?

と思う作品。

 

その先にしかないハッピーエンドや愛もある。

 

私たちが持っている愛とかルールは身に付けているだけで、人間は永遠に裸なのだ、という寒沢さん。

痛くって、愚かな女子高生の愛の証明。

 

 

宇宙以前

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 ぼくらがかれらと遭遇すればきっと、あたりまえだったはずの生命としてのアイデンティティが引き剝がされて、自分になんにもないことに気付くのだろう。生命であるという点でしか自己の価値を保てないことに気付く、生きるということにしか自己を見出していなかったことに気付く。

 

生命であるという事実がぼくらを形作っていたならばそれを失ったときぼくらはなんになるのか。

だから、ぼくは宇宙人に会いたい。

 本作の中で一番好きな作品。

一人称が"ぼく"でありお兄ちゃんなので、男の子のようです。

愛とか恋とかそういうものではなくて、「世界とぼく」という感じのお話です。

 

どこまでが、この目で確かに見たと言える世界で、どこまでが他人と共有している世界なんだろう。

いつの間にか、自分の周りにはたくさんの人がいたから、当然たくさんの目があって、自分の世界はこのたくさんの目と同じ世界を見ている。

 

ぼく個人としての、何のカテゴリーにも入らない、社会とか家族とか、そういうものを全て度外視した世界はどこにあるんだろう。

 

それを教えてくれる宇宙人にぼくは会いたい。

 

いったい自分とは何なのだろうか?

そんなお話です。

 

逃げて逃げて逃げ続けて、自分にとっての自然に出会う話です。

不自然なことを選択したら、結局自然に戻るためのルートしかないわけで、だったら初めから自然な方を選択すれば良いのですが、それに抵抗してしまったり、気付けないのが人間らしい。

 

 

 

きみ、孤独は孤独は孤独

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丸いドームの真ん中で、光が切り裂かれて、ぽつぽつと、孤独に投影されているのを想像した。それらを星と思い込んでいればわたしたちは幸福になる。生物として本能的に、そう感じてしまうのだろう。  

 本書の中で一番好きな言葉。

 

確かに、誰かが一番最初に星をみたときに「星は一つ一つの場所が決まっていて誰ともくっつけない孤独なものだから、こんなにきれいなんだよ」とか言ったら、多分私の中で星は孤独の象徴になっただろうなぁと思いました。

 

「見てごらん、星がきれいだねぇ」と言われて育ったから、星はきれい以外の何ものでもないと思っていた。

だけど、ほんとうは孤独だからそれぞれが輝くことを忘れずにいるのかもしれない。

 

本作品は人間とアンドロイドのお話。

この曲が浮かびました。

 愛のため今日まで進化してきた人間 愛のためすべて退化してきた人間♪

 

愛がないなら人間じゃないなら、どうやって愛を証明したらいいの?

この愛が愛だという証拠はどこにあるの?

 

愛ってなんなのさ。というお話です。

 

 

初めての最果タヒさんでしたが、本業は詩人さん?なのでしょうか。

いまいち分かりませんが、詩的な言葉がたくさんあって「わぁ、すごい、いいなぁ」と思う言葉がたくさんありました。

 

 

語彙力は圧倒的に違っていても、同じ日本人で、単語の意味は分かるのに、なんでこの組み合わせが思い付かなかったんだろう、言葉で表現するってこういうことなのか、とか、そんなことを考えて読んでいました。

 

私は、どんな文に才能があるとか、どんな文がかっこいいとかセンスがいいとか、どんな比喩がダメとか単純とかは分かりませんが「きみの無視が、きょうからすこし、苦しくって心地いい。」とかは、すっごい気に入りました。

 

 

片思いをこう表現できるって、言葉の力ってすっごいな。と思いました。

 幸せってなんて曖昧な言葉なんだろう、と思った。