≪内容≫
ハリウッドの脚本家ギルは、婚約者とその両親と共に憧れのパリに滞在中。 そんな彼がある夜、0時を告げる鐘の音に導かれて迷い込んだ先は、芸術花開く1920年代だった! これは夢か幻かと驚くギルの前に、次から次へと偉人を名乗る面々と、妖艶な美女アドリアナが現れて・・・。
これは文豪好き、芸術好きな人はめっちゃ楽しいんじゃないでしょうか・・・!
しかもクレイジーだと思ったらスペイン映画だった。ナイス!大好きスペイン映画!
懐古主義者が現実に光を見つけるとき
売れっ子脚本家のギルは、その地位を捨て夢である作家の道に進みたい。
だけど、フィアンセのイネスにその気持ちは全く伝わらない。とりあえずワンチャンあげるけど、売れなかったら脚本家に戻ってね、と釘をさされてしまう。
ギルは20年代のパリに恋していた。しかしそんなギルの思いをイネスは友人たちに話してしまう。その結果、ギルは「現代に適応できない懐古主義」と批判されてしまう。
イネスもその友人夫婦もイネスの両親もリアリストだ。
一人ロマンチックなギルは文字通り孤独。それでも現実にしか存在できないのだから、現実世界でのロマンの対象であるイネスに怒ったりしない。例え彼女に「一人で先に帰れ」とか「雨が好きなんてどーかしてる」「勝手に散歩してれば」とか冷たい言葉を投げつけられても。
一人パリで路頭で彷徨う(パリは大好きだけどいかんせん土地勘はゼロだった)ギルの元に一台のプジョーが。ギルはやけくそで乗車。そしてギルの目の前に現れたのは・・・・
フィッツジェラルド!?
ヘミングウェイ!?
さらにさらに文豪だけじゃない。画家も出てくる。映画監督も出てくる。
とりあえず色々ぶっとんでるけど、個人的にダリのシーンが一番好き。
ダリだけずっとサイの話してる。しかも何度も「私はダリ!」とか言いだす。
OHギル・・・・だよね。OK。クールになれ、奇跡の夜やぞ!!
しかし、奇跡の夜も何度も続けばあの感動はいずこ・・・。ギルはついに「やっほー」みたいなノリでブニュエルに話しかけあの名作の構想をペラペラ喋り出す。
上手く言えないけどこういうノリがスペインっぽいんだよなぁ・・・。
ギルは現実世界ではイネスと婚約しているが、タイムスリップした夜にはピカソの愛人・アドリアナに恋をする。二人の共通点は、今に美を見出せず過去にこそそれがあると盲信している部分だった。
過去に恋したギルと同じように過去に恋したアドリアナ。
だって過去には敬愛する作品と作家たちが存在している。
現実ではイネスの浮気が発覚するし、ほら、現実ってやっぱりうんざりすることだらけ・・・。
さーてギルはどんな選択をするのかな?
最後はギルの大好きなパリの雨の中で劇終です!
この映画めちゃめちゃ明るいノリなんですけど、ギルの心理が一本を通してものすごく成長していく。その成長はなんか気付かなくていいよってくらいあっさりしてるんですけど、このあっさり具合がたまらないー。
作品はロマンチックでも作者って超現実主義。