≪内容≫
人間の想像を超えた限界点から始まる、未体験ショック・ムービー!
うーん。どこまでも深堀り出来そうな映画です。
目を覚まさないために眠らない
主人公は一年間眠っていない。身体は瘦せ細り、工場勤務以外は空港のカフェか娼婦との逢瀬しか描かれていない。そんな生活。
ある日、主人公のトレバーは不注意で同僚の手を機械に巻き込ませてしまう。トレバーの前にだけ現れる謎の男アイバンによってトレバーは追い詰められていく。
この事故のせいで工場の同僚たちはトレバーを避け、結果的にトレバーは工場をクビになってしまった。トレバーは原因はアイバンと腕を失ったミラーの怨念だと思い込み、誰かが自分を陥れようとしているのだと考える。
さて、この物語はいわばトレバーの現実逃避なのですが、女の人が三人出てきます。
まずは"母の日"ということで、トレバーが自分の母の思い出を空港のウェイトレスに語る。彼の母親はすでに他界していた。
娼婦ながらトレバーの心配をして世話を焼く人情家のスティービー。
そしてウェートレスのマリア。
彼女とは彼女の息子と一緒に三人で遊園地に行きます。
彼はここでもママとの思い出を語る。相手はマリアの息子である。
乗物に乗りたいとせがむ息子にママが来るのを待とう、というトレバー。
ママが来るのを待とう
これがキーワードな気がしました。
冷蔵庫に貼ってある謎のメモ。穴埋めに入るアルファベットをトレバーは考える。
冷蔵庫。
遊園地でトレバーと息子の2ショットを撮ったマリアは冷蔵庫にその写真を貼る、と言う。
謎のメモが張り付けられた冷蔵庫の上部からはおびただしい血が流れ続けてる。
さてその中に入っているものはなんなのでしょう?その中身は映画の中で出てきますが、私が思うにその中に入っているのは母親だと思うのです。
トレバーはウエートレスにも多額のチップを、そして娼婦にはもちろんお金とそれ以上の優しさで持って接してきた。二人はそれに応えるようにトレバーを受け入れ愛するのですが、トレバー自身がそれを拒否する。
ママを待たずに二人で入ったROUTE666。おそらく、トレバーにとっての現実はこの中です。ママと一緒に入っていればこんなことにはならなかったかもしれない。
666の中で気を失い、母に頭をなでられながらすやすやと眠る息子は、トレバーが欲しかった現実なのではないでしょうか。
唐突なシャットダウンによる睡眠さえ出来ず、誰にも心を許せず、故に誰からの手も掴めないトレバー。
お金でそれを得ようとしても、結局は自分がそれを否定してしまう。
母なる大地、というくらいだから母がいなかったら足場がおぼつかなくて眠れないよね。