深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】とらわれて夏~素直とは理屈や他人の価値観でなく直感で愛を見つけられること~

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≪内容≫

 心に傷を負ったシングルマザーのアデルと13歳の息子ヘンリーはある日、偶然出会った逃亡犯のフランクに強要され、彼を自宅に匿うことになる。決して危害は加えないと約束したフランクは、家や車を修理し、料理をふるまい、ヘンリーに野球を教える。やがてヘンリーはフランクを父のように慕い、アデルとフランクも互いに惹かれ合っていくが……。

 

 愛を読むひとといい、ケイト・ウィンスレットは閉鎖的な恋愛がすごく似合う。オドレイ・トトゥも閉鎖的な恋愛映画のイメージだけど、全く異なる世界観なのが不思議。特にオドレイは「テレーズの罪 」に出ているので、ケイトより振り幅が広い気が。二人とも間違ってもセックス・アンド・ザ・シティみたいな女子同士で群れる役はハマらないだろうな。常に一対一の恋愛。美しい。

 

囚人の母

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  父と離婚した母と二人で暮らすヘンリーは、毎週日曜日になると父親の新しい家族と食事をする。ヘンリーには父も兄弟もいたが、母は一人きりだった。

 一軒家に母と二人で暮らすヘンリーは母の孤独や寂しさを感じ取り、一日夫クーポンを作ったり、なんとか母の孤独を埋めたいと願うが、それにはあまりに若すぎた。しかしどれだけ願っても簡単に母を守れるような大人の男にはなれるわけもなく、ヘンリーは自分の力不足を自覚しながらも母を愛して暮らしていた。

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 週に一度だけしか行かないスーパーで、脱獄犯のフランクに目をつけられたヘンリー達はすぐに出ていくとの約束を信じ家にフランクを迎える。

 ニュースや新聞で見るフランクは凶悪な犯罪者だったが、ヘンリーの家にいるフランクは日曜大工が得意で、ヘンリーには出来ない車の修理や、家の修理を率先してやっていった。

 そして父親の代名詞とも言えるキャッチボールをヘンリーに教え、三人でピーチパイを作った。母を愛するが故に子供という役割を捨てて大人になろうとしていたヘンリーにとってフランクは頼れる大人の男であった。

 

 この家の欠けたピースは母を愛し、ヘンリーを愛してくれる大人の男だったのだ。

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  母はうつ病で元夫はそんな母親を「情緒不安」とヘンリーに言う。母のロマンチックで生活感に欠ける生き方を否定されることもあった。

 ヘンリーには、なぜ母が非難されるのか分からず、またなぜ母がいつも脅えているのかが分からない。母もまた、自分の幼い息子に苦悩を打ち明けるなどもってのほかで誰にも言えない苦しみを背負って生きていた。

 

 そんなときに現れたフランクもまた誰にも理解してもらえない傷を負っていたのだった。

 実際の刑務所から逃げてきたフランクがやってきたのは、今いる場所を刑務所と思っている女の家だった。二人の異なる囚人が出会い新たな土地を探す物語をヘンリーは間近で見ながら大人になる。

とらわれて夏 (字幕版)

とらわれて夏 (字幕版)

 

  ヘンリーは突如現れたフランクに父を感じ慕いながら、母を奪われる苦しみも同時に背負う。だけど愛するということに関してヘンリーは生まれながらの才を持っているように感じた。素直とはきっとこういうことなのだ。理屈や他人の価値観でなく直感で、愛を見つけられること。

 血の繋がりもなくたった5日間しか過ごさなかった三人には距離や時間に負けない絆が紡がれていた。