深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】イヴの時間~人間の愚かさがロボットを生み、ロボットも人間も苦しめる~

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《内容》
ロボット倫理委員会の影響で、人々はアンドロイドを“家電”として扱う事が社会常識となっていた時代。頭上にあるリング以外は人間と全く変わらない外見により、必要以上にアンドロイドに入れ込む若者が現れた。彼らは“ドリ系”(※Android Holic=アンドロイド精神依存症)と呼ばれ、社会問題とされるほどである。高校生のリクオも幼少の頃からの教育によってアンドロイドを人間視することなく、便利な道具として利用していた。ある時、リクオは自家用アンドロイドのサミィの行動記録に「** Are you enjoying the time of EVE? **」という不審な文字列が含まれている事に気付く。行動記録を頼りに親友のマサキとともにたどり着いた先は、「当店内では、人間とロボットの区別をしません」というルールを掲げる喫茶店「イヴの時間」だった。

 

 今でもAIにいずれ仕事が奪われるだろう、と言われていますが、この作品はアンドロイドが今の冷蔵庫や洗濯機みたいに当たり前に”家電”になって一緒に暮らす時代のお話。いつでもそばにいて身の回りの世話もしてくれる。それでいて見た目は人間と全く変わらない。人は、アンドロイドに対して機械やロボット以上の感情を持たずにいられるのでしょうか?

 

人間とは愚かな生き物

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  主人公のリクオにもアンドロイドのサミィがいた。リクオはサミィをロボットだと思っているから意思を持つことなどないと思っていた。すべてが事務的で、こちらの気持ちを思いやるとかそういう人間的な心の動きは持っているはずがないと思っていたのだ。

 しかし、あるときサミィの淹れるコーヒーの味が違うことに気づいた。そこでリクオは不信感を持ちサミィの行動履歴を探る。

 そこにあったのは「イヴの時間」という喫茶店への入店記録だったのだ。

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  普通アンドロイドは頭の上に赤い環をつけていなければならない。だけど、この喫茶店の中ではアンドロイドはその環を外し、人間もアンドロイドも等しいお客様となるのだった。

 リクオはここのコーヒーを飲み、サミィが淹れたコーヒーの味とそっくりだということに気づく。そして、ここのウェイトレスであるナギにアンドロイドと人間の関係についてもっとお客さんと話してみるといいと言われ、友人と一緒に通うようになる。

 

 そこでリクオはロボットに持っていた偏見や、ロボットが人を思いやったりすることなどありえないという固定観念を少しずつはがされていくのだった。

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  倫理委員会は、ロボットが作る野菜は大丈夫か?と不安を煽ったり、ロボットにあまりに入れ込んでしまう人間をドリ系などと言って煙たがる風潮をメディアを通じて人間に投げかける。

 人間たちは、そのCMや社会的な風潮からロボットたちを過剰に避けたり恥ずかしがったりする。

 しかし、そんなことが必要なのは、ロボットとわかっていながら、作っておきながら、人間と同じ感情を求めてしまう人間の愚かさがあるからなのだった。

 そばにいたり面倒を見てくれることが人間らしさなら、同じように泣いたり苦しんだりしているときに声をかけてほしい、マニュアルより大事なことを人間が選ぶように、ロボット三原則より目の前にいる自分のことを見てほしい、そんな感情が生まれてしまう人間の愚かさなのだ。

イヴの時間 劇場版

イヴの時間 劇場版

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 人間が人間だけでなくほかの生き物や芸術や作品や物体を愛せるのは素晴らしい美しさだと思います。