《内容》
高校生の卓巳は友達の付き合いで行ったイベントで“あんず”と知り合い、アニメのコスプレをして情事に耽るようになる。しかしその写真が何者かにばら撒かれ、彼女の複雑すぎる家庭事情までもが徐々に明らかになる。それぞれが抱える思いと苦悩がリンクし合い、やがて一筋の光が見えるラストに収束していく…。R18+
ふがーいなーいやーいやぁ~!
これ小説読んだときはコスプレとか人妻とかイロモノばかりに目がいっちゃったんですが、映画見ると結構深い人間関係模様だったのね・・・と反省しました。
無力感と現実逃避
人妻の里美はいつも「むらまささま」を待っている。自分を守ってくれるナイトである「むらまささま」を。そしてその相手は今のところそれは高校生の卓巳なのだった。
ナイトを待つ人妻に共通するもの、それは夫がナイトではないということだ。
里美は不妊治療をしており、原因は夫側にあったが夫は我関せずで両親のいない里美は義母から子供ができないことに対して強く当たられていた。そんな里美の唯一の救いが現実逃避であったのだが、義母の盗聴により里美の不倫はバレ、情事の録音はネットに流されてしまう。
里美は離婚を切り出すが、もはや彼女はアメリカに旅立つしかなかったのだった。
一方、卓巳は助産院の息子で、出産には何度も立ち会っていた。出産と縁がある男と、不妊治療中の女性が出会ってそういう行為をしても子供は生まれないし、出産の立ち合いには優れていても出産自体を可能にする力は卓巳にも誰にもない。
かくして卓巳は最初はお金をもらいながらむらまささまとなり、その後、本当に里美に心を惹かれても彼女との未来を真剣に考える気もなく泣きわめき、その不道徳が世間に暴かれ不登校になるというなんともふがいない高校生っぷりなのだった。
だとしたら
寿命だとして
じゃあなんだってその子たちはその短い一生を過ごすためにこの世に生まれてくるの?
ほんとに誰でもいいから
ああ あの子たちの短い人生にはそういう意味があったんですかぁって
教えて納得させてほしいって思う。
助産婦の母親は女手一つで卓巳を育て、ふがいない父親にお金まで渡していた。そして大切な一人息子は、不登校になり、その命の灯は点滅していた。
何信じようと勝手だけど
うちら
どうあがいたってここから抜け出すことできないかんね
卓巳のクラスメイトの良太は団地で認知症の祖母と暮らしている。母は生きているけど別の場所に住んでいて生活は常にギリギリだった。勉強も嫌いだし大学進学はしないと決めていたけれどバイト先の先輩に諭され、将来を考えようと前向きになっても同じ団地の純子からあいつはゲイだから誘われてるんだ、と釘を刺される。
人を信じては裏切られ、それでも信じようとして、信じる前にほかの人からちゃちゃが入る。そして悲しいことに、そのちゃちゃは新聞記事に載るほどなのだ。
この物語は、人の二面性を描いていてふがいないのは晒上げにされた卓巳だけでなく全員なのだ。誰だって人に見られたくないあくどい部分があって情けない部分があって、今いる場所から逃れようと逃れられない、ってもがいている。
俺は
ほんとにとんでもない奴だから
それ以外のところではとんでもなくいい奴にならないとダメなんだ
しょーもないと思われようが、キモイと言われようが引かれようが、卓巳の母が言うように、今生きている人間はたくさんの赤子が生まれてすぐ亡くなってしまうのとは反対になにがどうであれ生きてきたのだ。
もう人生ふがいねえよ。あたしだけじゃなくて、きっとみんなすげえかっこ悪いとこもあって、すっっげえあくどいとことか腹黒いとことか気持ち悪いとことかあって、でもそれが人間で生きるってふがいねえに違いねえ。