深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧

英国諜報員アシェンデン/サマセット・モーム〜人は揺り籠から墓場まで、束の間の人生を愚かに過ごして命を終える〜

《内容》 時はロシア革命と第一次大戦の最中。英国のスパイであるアシェンデンは上司Rからの密命を帯び、中立国スイスを拠点としてヨーロッパ各国を渡り歩いている。一癖も二癖もあるメキシコやギリシア、インドなどの諜報員や工作員と接触しつつアシェンデ…

月と六ペンス/サマセット・モーム〜芸術家は、作品だけでなく自分自身をも投げ出す〜

《内容》 その絵を描いたのは、知ってはならない秘密を知った罪深い男だ。あるパーティで出会った、冴えない男ストリックランド。ロンドンで、仕事、家庭と何不自由ない暮らしを送っていた彼がある日、忽然と行方をくらませたという。パリで再会した彼の口か…

白い人・黄色い人/遠藤周作〜私は、幻影を抱いて生れ、幻影を抱いて死ぬ人間たちに復讐する〜

《内容》 第2次世界大戦中のドイツ占領下のリヨンで、友人の神学生をナチの拷問にゆだねるサディスティックな青年に託して、西洋思想の原罪的宿命、善と悪の対立を追求した「白い人」(芥川賞)汎神論的風土に生きる日本人にとっての、キリスト教の神の意味…

星の王子さま/サン=テグジュペリ〜世の中には、間違いなく大人になってから読んだ方がいい児童書がある〜

《内容》 いちばんたいせつなことは、目に見えない世界中の言葉に訳され、70年以上にわたって読みつがれてきた宝石のような物語。今までで最も愛らしい王子さまを甦らせたと評された新訳。これまでで最も愛らしく、毅然とした王子さまが、優しい日本語でよみ…

カメレオンのための音楽/トルーマン・カポーティ〜カポーティが生涯イノセントを愛していたことがよくわかる〜

《内容》 現実にあった残虐な連続殺人と刑事の絶望的闘いを描く中篇「手彫りの棺」。悪魔と神、現実と神秘の間に生きる人間を簡潔、絶妙に描く表題作など珠玉の短篇群。M・モンローについての最高のスケッチ「うつくしい子供」など、人の不思議さを追及した…

聖書を語る/佐藤 優, 中村うさぎ〜エヴァとサリンジャーは、全く同じ到達点を目指してる〜

《内容》 第一章では、カルヴァン派の佐藤氏とバプテスト派の中村氏が、同じプロテスタントでありながら宗派によって異なる、他力本願と自力本願、終末論など神学的な問題を語りあう。第二章では村上春樹の『1Q84』、サリンジャー、『新世紀エヴァンゲリオン…

地雷グリコ/青崎有吾〜馬鹿と煙は高いところが好き〜

《内容》 ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百…

オーバーヒート/千葉雅也〜男が二人で生きるとは、共に、少し遅めに落ちて行くことだ〜

《内容》 行きつけのバー、年下の恋人、故郷の家族と友人たち……。かけがえのない日々を描き、芥川賞候補となった傑作恋愛小説。川端賞受賞の名短篇「マジックミラー」併録。「新書大賞2023」受賞『現代思想入門』の著者による文学の最前線。 デッドラインよ…

デッドライン/千葉雅也〜男たちが女しか好きにならないなんて、僕を騙すための壮大なドッキリなんじゃないかと思う〜

《内容》 気鋭の哲学者が放つ、疾走感あふれる青春小説。野間文芸新人賞受賞!2001年の春、現代思想を学ぶ「僕」は、大学院修士課程に進んだ。友人の映画制作を手伝い、親友と深夜のドライブに出かけ、家族への愛と葛藤に傷つき、行きずりの男たちと関係を持…