深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

ぼくんち/西原理恵子~泣いてるヒマがあったら笑え!そして生きろ!~

≪内容≫

 「ぼくのすんでいるところは―/山と海しかない しずかな町で―/はしに行くとどんどん貧乏になる。/そのいちばん はしっこが/ぼくの家だ―」。腹違いの兄、一太。突然現れた、美しくてやさしい年の離れた姉、神子(かのこ)。そして「ぼく」、二太。クスリを売る。体を売る。金を貸す。とりたてる。この町の多くの大人たちは、そんなふうにして生きている。

 

 

 人生にイイとかワルイとか、最高とか最低とか、そういうのを決めるのは本人であって他人じゃない。

 

ネットやテレビではクリスマスにひとりだと「クリぼっち」と称したり、キリスト教でもないくせに「恋せよ」と囃したてる。

クリスマスにシングル=寂しいみたいな方程式を造り上げて、消費させようと目論んでいる。

そんで大して好きでもない人と「クリスマスにぼっちはいやー!」なんて目先の感情で付き合っちゃったり。

 

でもそれでも本人がよければそれでいいのだ。

 

 

この本「ぼくんち」に出てくる貧乏な人たちの日常は決して「可哀相」ではない。

母が蒸発しようが、母の借金を返すために水商売をしようが、借金の保証人にされた挙句逃げられても

誰も他人の人生を「可哀相」だという資格はない。

 

人はみんな、大人になったら自分で選択した結果が今となっているのだ。

そして、誰の人生にも共通なのは「ひとりでは生きられない」という事。

 

ぼくんち」に出てくる人々はみんなロクデナシだけど、みんな守りたいものがあって、その為に傷付いたり泣いたり怒ったりしてる。

 

何か損得勘定で自分守って生きるのと「生きる」って言葉の意味合いが全く違うなと思った。

特にねえちゃんのふとした言葉に本質が見える気がする。

 

 

幸せはお金では買えない

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ねぇちゃんの手、小さいやんか。

あんまりしあわせ持ってきてくれてもな。

こぼれてしもてもったいないわ。 

 

かあちゃんが蒸発し、帰ってきたと思ったら家の権利書を持ち出してまた消えた。

そしてねえちゃんが大黒柱になって働くのだが、それを受け入れられない長男・一太。

家を出てこういちくん(不良)の下で働くことに。

そして、そのお金をねえちゃんに渡して少しでも楽になってほしいと思うのだが、ねえちゃんが欲しいのはお金ではなかった。

 

大事なのは大切な人が死なないこと

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見てみ、燃えたらなくなるもんやんか。

あんた、こんなもんに何で一生けんめいに。

死ぬやも殺すやもしれんほど何をそんなに。

何でせんでええ苦をするの。

今がいややったら逃げたらええやんか。 

 

みんなの家を買い戻すために、一太はイヤな仕事をたくさんしていた。

殺すか殺されるか。そんな所まで追い詰められていた一太の元へねえちゃんはやってきた。

 

しあわせにしたくて、しあわせになれなくて

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この町にすんでるみんなは、しあわせになりたいだけやのに、何があかんのやろう。

一太はここにおるだけでつらい目にばかりあってた。

二太もここにおるだけで大きゅうなったらつらい事ばっかりあるのやろうか。 

 ねえちゃんはこの後、遠い親戚のおじちゃんに二太を引き取ってもらう事にします。

「ねえちゃんの帰りがなんぼ遅うなっても、これからずっとお部屋の明かりつけといて」と言ってたねえちゃんが、自分より二太の幸せを考えてこの土地を離れるようにしたのです。

 

ねえちゃんにとって、一太と二太がそばに居て三人一緒に笑って暮らすことが幸せだった。それに比べれば働くことは嫌じゃなかったんだと思う。

 

だけど一太は「ねえちゃんに食わせてもらってる自分」が嫌だった。

ねえちゃんが知らない親父にチチを揉まれたり、殴られた痕を残して帰ってきた手にお土産と称した自分達へのご飯がぶら下がってたり。

ねえちゃんが大切だから、しあわせになってほしかった。

その為に自分が出来ることを探した結果、三人はバラバラになってしまった。

 

二太は遠くなっていく町を見ながら笑うのだった。

いつかのねえちゃんの教えを守って。

 

 

人は一人では生きていけない。

一人では生きていけないから相手に頼る人もいるし、頼られることで存在意義を見出す人もいる。

何が正解とか、間違いとかは無い。

 

 

最後にねえちゃんが二太とタイムカプセルを掘るところで涙が静かに流れました。

ねえちゃんが自分のしあわせより二太の将来を思って手を離した時、そのねえちゃんの覚悟が胸に迫ってきたような・・・

 

なんだろう、ねえちゃんが温かくて、優しくて、

出てくる人達はロクデナシだけど、温かくって。

 

生きてく上で絶対必要なのはお金です。

だってお金がなくちゃ大切な人を守れないから。

急な事故、急な病気、そういう時お金がなきゃ死ぬのを待つしかありません。

 

お金は卑しいものじゃなくて、なくては生きていけないものです。

でも、「愛」もなくては生きていけないものです。

 

ぼくんち」にはお金はないけど、ひどく温かい愛が詰まっています。