深夜図書

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海賊とよばれた男/百田尚樹~少年ジャンプにおける友情・努力・勝利が詰まった話~

≪内容≫

一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。

 

百田尚樹さんの小説のいいところは文字が大きいところだと思う。

最近字がちっさい小説ばかり読んでいたせいか、とても読みやすかった。

私は「永遠の0」「風の中のマリア」「影法師」「輝く夜」「モンスター」は読了しているのですが、どれもとても読みやすいです。

これってすごいことだよなぁ・・・と思います。

百田さんの小説はかなり読みやすい部類だと思います。児童書と同じくらい。

内容も歴史経済と分かりづらいしとっかかりにくいところにあるのに、説明の仕方がとんでもなく上手いと思う。

経営者向けかはわからないけど、こういう風に書かれていると歴史はとてもすんなりと頭に入ってくるんですよねぇ。

 

戦後、日本人はそりゃあたいそう頑張ったんだ!といわれてもいまいちピンとこない。そりゃ頑張ったから今があるのは分かるけど、とても曖昧なイメージしか出来ない。

そういうところを大きく補ってくれる本だと思います。

"何のために?"が明確なので入り込めます。

 

 

敗戦から始まる

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最初「海賊とよばれた男」ってタイトルを見てすしざんまいの社長かと思いました。

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/スシザンマイ!\

 

余談でした。

日本が戦争に負けたことは誰もが知っていますよね。

でも"石油"が足りなくて負けたというのはそこまで知られていません。(多分)

石油と言うか資源ですね。

そして敗戦しGHQの言いなりになるしかない日本、そしてそこにつけこもうとするアメリカとの状況。

そもそも日本は国内産の石油は昭和の初めにほぼ採り尽くされ、石油製品のほとんどはアメリカからの輸入に頼っていました。

そこへ「石油全面禁輸」の措置が取られた日本は、戦うか死ぬかしかなかったわけです。

そんなこんなで始まった太平洋戦争。

勝ったアメリカは日本が二度と軍事活動しないように日本人の牙と爪をすべて抜いてしまおうと考えていた。

日本が戦争を始めたのも、負けたのも石油。

ゆえに石油の権利をアメリカに委ねることはこれからの日本は自由といってもアメリカの手の内になってしまうということです。

国岡は言う。

日本は戦争に敗れて、何もかも失ったが、このまま終わるようなことはない。これからは平和な国として、武力ではなく経済で戦っていく。そのためには石油は必要不可欠である、だからこそ、石油の自由化が急がれる。

まさしく経済戦争の世界になりましたね。

日本人の牙と爪を抜こうというGHQの計画は実っていると思います。

日本人の謙虚すぎる日本国民としての誇りのなさは戦後のGHQの指示による情報操作なんじゃないかと思います。

戦争問題の難しさはやはり死者が出ていることですよね。

戦争なんだから当たり前だよ!って思う人もいると思いますが、日本が負けたといってもそれまで色んな国の色んな人を殺めているわけで。

だから勝ち負けではなくて"戦争をした"という事実が深く国民の傷になっていると思うのです。

国の為に命をかけて戦ったのは日本だけではない。

アメリカやイギリスのように「やらなければやられていた、だから仕方ない」みたいに厚顔でいられない民族だと思うのです。

強い国というのは総じてこういう図太さがあると思います。

強い奴が繊細な奴につけこむ。川上未映子/ヘヴンのいじめと同じ。

 やる奴はやる、できない奴はできない、それだけ。

 

国の代表者を選ぶ大切さが身にしみて分かる。

こういうことが出来る人は限られていると思うから。

 

 

個人経営、株式会社

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鐡造が個人商店にこだわったのは、株式会社だと責任の所在があやふやになるからだった。それに株式を公開すれば、店員たちは身の知らぬ株主のために働くことになる。

働かないと生きていけない身分なのですが、会社ってほんと嫌いなんですよね・・・。これは向き、不向きがあると思います。

一人が寂しい人、仲間と働いている!感がほしい人、安心がほしい人、肩書がほしい人・・・そういう人は向いていると思います。

でも一人が好きで、好きなときにトイレに行きたくて、イミワカラン接待が死ぬほどイヤな人は向いていないと思う。

鐡造はきっと、そういう人でさえ「ついていきたい」と思わせる魅力があったんだろうなぁと思う。

「この人についていきたい」そう思える人に出合えたらそれはとてもステキだと思う。

本書に「黄金の奴隷たる勿れ」と書かれていますが、人は働かなきゃ生きていけないんですが、金のためとは割り切れないものです。

そこにはやはり人と人との繋がりがあるから、結局のところ人間的な魅力がものを言うと思います。

 

日本人とは

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なんでしょうか。

私にはいまいちここのところが分からないんですね。

いちばん大事なことは日本人の誇りと自信を失わないこと。それさえ失くさなければ、何も怖れることはない。 

とあって。

とにかくこの本が言いたいことというのは「日本人としての誇りと自信を持て!!」だと思うのですが、日本人ってどういう基準?って思う私がいます。

これはジェネレーションギャップが大きいせいというのもあると思います。

戦後の日本と今の日本じゃ情報量も経済も何もかもが違う。

戦時中の日本の先人たちの行いで親日と思ってくれる国が出来て、そのおかげで今の日本人はほぼ全世界に旅行に行けるのですが、それを誇りに思うって何かおかしくね?とか思っちゃうんですよ。

だってそれは先人たちの行いであって自分たちではないんだから、そこは謙虚な気持ちでいる方が当たり前だと思うし。

日本は戦後一度も戦争をしていない!こんな国は他にない!だから自信を持て!とか、だってしたくないからしてないんじゃん・・・としか思えない。

 

なんかハーフの子がどっから日本人なの?と言ったという話題がちょっと前にあったけど、本当にどうなの?と思う。

謙虚なら日本人なの?汚かったら日本人じゃないの?

よく、日本すげーみたいなまとめサイトとかあるけど、ちょっと気持ち悪い。日本人ってそんな綺麗な人種じゃないでしょ。

てかどこの国だって綺麗な人ばかりじゃないでしょう。

みんながみんな親切なら犯罪は起きないし、誰かの財布が警察に届けられている時にはどこかでひったくりが起きてるよ。

女性が夜道を歩いても治安が良いから安心って、痴漢はずっと改善されていないよ、夜道ったって田舎は本当に危ないよ。

何か海外に比べてどうとかっていうの意味あるか?って思う。

それこそ日本が日本じゃなくなるんじゃないの。

誇りとか自信とかってきっとそれぞれの胸の内にそれぞれの形であると思う。ただそれに「日本人としての」とかつくと"?"になってしまう。

個人としての誇りと自信じゃ駄目なんかいって思いますが・・・。

自由なら"日本人として"とか縛りつけないでほしい。

人類みな人間だし。

肌や目の色で差別するなというのなら生まれた国で縛らないでほしい。

「日本は素晴らしいよ!!」「四季が美しいよ!!」とかはそれぞれの心に自然に生まれなきゃ意味ない。

 

 

百田尚樹の本は面白い。

純粋に出光はすごいなーって思ったし、アメリカの柔軟性もさすがだなーと思った。日本の村八分の汚さとかすごいイヤだなーって思ったし。

でもね、こういう思考回路って全部書いてあるんですよ。

だから良いも悪いも全部、百田尚樹に誘導されている気がしてそこが何とも言えず気持ち悪いなぁと思ってしまいます。

なんとなーく洗脳されている感じ。

思考しなくてすむ読書ほど楽です。

このお話は少年ジャンプ王道の「友情・努力・勝利」が大いに発揮された作品だと思います。

しかもその中でも敵(米英)が圧倒的な悪で、どんな苦境に立たされても決して負けない主人公(日本)、他国を助けるヒーロー的な日本という図に見えます。

何かそれがすごく嫌だな~と思いました。

上手く言えないけど、この話が100%本当だとしても、いや100%本当だったらこんなジャンプ風に語らないで欲しかった。

もっとあっさりと報告レベルで「こんなことありました」風にして欲しかった。

 

なんかほんとこの気持ちが整理つかないんですけど、日本人が日本人を賞賛するのってなんかイヤなんですよ・・・。

人が人を賞賛するのは分かる、でも日本人って括られると何かな・・・と。

例えば米・英・独・中・日の5カ国の代表がルームシェアするとかでその中で日本人として和食を披露する・・・!とかなら分かるんですがね。

 

私はあまり日本人の自覚がないのかもしれません。

ちゃんと税金払ってるし国民の義務は果たしているつもりですが、どこか対個人じゃないかなって思ってしまいます。

 

 

なんだかんだ言っても面白いことには変わりません。

サラサラと読めるので是非一読あれ。