≪内容≫
映像制作会社に勤める安藤孝則は、ネット上で生中継されたある動画の解析を依頼される。それは、中年男の首吊り自殺の模様を収めた不気味な映像だった。孝則はその真偽を確かめるため分析を始めるが、やがて動画の中の男が、画面の中で少しずつ不気味に変化していることに気づく。同じ頃、恋人で高校教師の丸山茜は、孝則の家で何かに導かれるようにその動画を観てしまうのだった。今“リング”にまつわる新たな恐怖が始まる。
「らせん」の主人公・安藤の息子が主人公。
リングシリーズはこれで4作目になります。繋がってることは繋がってますが、ホラー要素はどんどん削がれていきます。
なぜなら、「ループ」が全ての解決になってるから。どんなことが起きても、仮想世界とDNAで腑に落ちることができる。
なので、ここから先「エス」と「タイド」はホラーというより世の理、諸行無常といった感じです。
登場人物と大体の内容
安藤孝則・・・主人公、竜司を死亡解剖した満男の息子
丸山茜・・・孝則の彼女、満男が作った施設で育つ、少女連続誘拐殺人事件で唯一救助された五人目の少女。
柏田誠二・・・少女連続誘拐殺人事件の死刑囚
木原剛・・・柏田がおこした事件を取材
真砂子・・・茜の母親
酒田清美・・・お蔵入りになった映画「リング」の貞子役
新村裕之・・・清美の息子、首吊り動画の撮影場所に住む
少女連続誘拐殺人事件・・・四人の少女が誘拐の後、殺害された事件。被害者は柔らかい布で絞殺されており、目立った外傷はないが、下着だけが取り去られていた。犠牲者の年齢はほぼ一定で、1991~1992年生まれ、事件当時十二歳前後。四人のうち三人が未婚の母から生まれる。
そして、四人の背格好と顔は非常によく似ていた。
物語の発端・・・柏田の死刑執行は首吊りであった。それが行われたのは刑務所であったが、なぜか新村の部屋で柏田自らが首を吊った動画が、孝則の元に届けられる。柏田の死刑執行時刻に茜が妊娠。しかし、その後茜の携帯にGPSがインストールされるという奇妙な事態が起こる。茜の脳裏には少女連続誘拐殺人事件の記憶が蘇り、孝則は茜と生まれてくる子供を守るため、そして、両親と自分との関係に根差された過去へ立ち向かうのだった。
丸山茜とその子供
少女連続誘拐殺人事件の被害者の特徴である、四人の背格好と顔は非常によく似ていたことはもちろん茜にも当てはまる。
そして、このことは「らせん」の世界で語られるリングウイルスの突然変異、排卵期に「リング」を読んだ人間が無性生殖により妊娠するという奇病に感染し生まれた子供たちであると推測できる。
すなわち、茜もまた貞子の一人である。しかも、母体は高野舞が産んだ貞子(真砂子)である。
そして死刑囚・柏田誠二、彼は実際は真砂子によってこの世界に舞い戻って来た竜司である。よって真犯人は柏田ではない。彼は茜をすんでのところで助けたところを捉えられ犯人にされてしまったのだ。
四人の少女たちは、ウィルスの影響を受け、無性生殖によって誕生した。しかし、茜は、真砂子という女性とおれとの間の、確かな行為の結果として生まれた。愛情が介在したことを、どうか信じてほしい。
と、竜司は孝則と茜にメッセージを送る。
が、これって本当なのだろうか?
竜司といえば「リング」では、女を強姦して何とも思わない鬼畜と描かれているが、「らせん」で高野舞によりとても純粋な人間であると評価されている。
ここで話は脱線したように思うかもしれない。
だけど、竜司は童貞なのだ。
ここはかなり大事なポイントだと思う。
茜は、真砂子という女性とおれとの間の、確かな行為の結果として生まれた。
という竜司の告白から、「確かな行為」=「SEX」であると想像するのだが、真砂子は愛する高野舞の肉体を使い捨ての蛹にして生まれた貞子である。その人間を愛することは果たして可能だろうか?
真砂子を高野舞と置き換えて見ても、高野舞と竜司の間に肉体関係はないし、高野舞と真砂子の容貌は全く別物である。
さらに、この告白には続きがある。茜が竜司の子供なら、なぜ自分で育てずに施設に送ったのかということだ。
神は万能であると言ったが、実は、ひとつだけできないことがある。何だかわかるか。人を愛して、子どもを作ってはいけないのだ。愛するといっても、アガペーのことではない。エロスとしての、愛だ。なぜ、神は人を愛し、子を作ってはいけないのか。愛して、子が生まれれば、そこに激しい執着が生まれるからだ。結果として、愛の対象者以外の者を平等に扱えなくなる。次元を超える旅を、永遠に宿命づけられている者は、エロスをともなった生々しい愛に、身を浸してはならない。
茜と暮らせば執着により、旅立てなくなるから、と竜司は言う。
これは一見、話の筋が通っているように思える。が、そもそも出来ないこととしてあげている"人を愛して、子どもを作ってはいけない"の結果が茜ならば、最初からこの告白は破綻している。
竜司は神ではない。
ただし、"次元を超える旅を、永遠に宿命づけられている者"である。すなわち、彼は高野舞が言ったように無垢な身体であり、
永遠に童貞でなければならないのだ。
となると、茜に言ったことは嘘なのだろうか。
私は嘘だと思う。
四人の被害者と比べて、茜がそこまで似ていないということを孝則も言っているが、それは人は見たいようにしか物事を見ない、のパターンであると思う。
そして、竜司は茜が他の被害者と同じ容貌であることを認め、すなわち生かしておいてもその寿命が長くないこと、そして孝則の気持ちを察して嘘をついたのではないかと思う。
茜は唯一の貞子であり、そのお腹の子供は貞子のDNAを受け継ぐものである。
ついでに、孝則も真砂子から再生しているわけなので、お腹の子供は貞子のDNAを色濃く受け継ぐ・・・つまりまだまだ物語は続く・・・tobecontinued・・・の暗示と思うとここが、一番のホラー部分であると私は思う。
そして、「タイド」に繋がっていきます。
タイドって胎動なのかな?と思うんですけどどういう意味があるのでしょうか。
とはいえ、「タイド」は本当に物語、劇終!!って感じでした。最初のオカルトホラーからどんどん百鬼夜行シリーズのような展開になっていった気がする。
愛って執着なんだよなぁ・・・。