深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

思考の整理学/外山滋比古~思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である~

≪内容≫

アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。

 

 

 整理すっぞ!ではなく、寝よう、忘れようという本です。

自発的に問題を何問解いても、問題自体を自ら作ることが出来なくては受動的であるという本書。

 

頭の巡りをよくするには身体の巡りを良くするのと同じこと。

頭も体の一部。

そして、運動することが忘却促進の効果があるらしい。

人はたぶん常に「忘れたくない!」と思って生きているのではないでしょうか。

大事なものがありすぎるし、色んなものを大事にしたいから。

 

でも何でもかんでも「忘れたくない!」としがみついていると、本当に自分にとって価値があるものなのか判断出来なくなってしまいます。

 

思考の整理とは、この価値の判断・区別のことです。

住んでいる部屋はすっきり綺麗でも、思考は汚部屋のように足の踏み場もない状態かもしれません。

 

 

ひとつだけでは、多すぎる。ひとつでは、すべてを奪ってしまう

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この一筋につらなる、ということばがある。

いかにも純一、ひたむきで、はた目にも美しい生き方のようであるけれども、かならずしも豊饒な実りを約束するとはかぎらない。

 

いくつかの筋とそれぞれにかかわりをもって生きてこそ、やがて網がしぼられ、ライフワークのような収穫期を迎えることができる。

 うぉおおおおおお!

すごい!

分かる!というかそうだったのか!!!という感じ。

 

この言葉はアメリカの女流作家、ウィラ・キャザーの「ひとりでは多すぎる。ひとりではすべてを奪ってしまう」という言葉が元になっていて、これは恋人のことで、相手がひとりしかいないとほかが見えなくなって、すべての秩序を崩してしまう、ということを表しています。

 

そうなんですよね。この人!ってなると依存しちゃうというか、執着してしまってまさしく秩序が崩れ、行く末に実りはない。

だからといって複数の人と付き合うとかではなく、恋人だけ!ではなく趣味だったり、社会活動だったり、アマチュア活動だったり、色んなことに目を向けようってことだと思います。

 

相手が恋人でなくても、執着したりすると相手の時間を奪いますしね。

 

一つのことをコツコツと積み上げることへの根拠なき美徳が、この社会にあることは明白ですが、優れたアーティストは一流ミュージシャンでありながら教員免許を持っていたりします。

コツコツ音楽のことだけやってきたのではなく、勉強もちゃんとやってきたわけです。

 

もちろん一つのことをコツコツ出来て実る人もいます。

だけど、私は絶対に一つのことだけに集中できない。

ずっと、一つのことに集中できる人がうらやましかった。

 

だから「イエーイ!!」って感じでした。笑

自分のやり方も落第点じゃないらしいぞ!って感じで。

 

読書一つとったって、同じようなジャンルを読み続けることが出来ない人間なんだから、好きなことだって飽きてしまう。

飽きるなら好きじゃないんだよ!って言葉に何度傷付いたか・・・。

 

好きだけど、毎日カレーは食べられないのと一緒。

飽きない程度に嗜むから、ずっとずっと好きでいつづけられるのさ!!

カレー食べたりシチュー食べたりするから、やっぱりカレーがいいなとか、今度はバターチキンカレーにしようかなとか、想像が膨らむのだ!!

 

だから、一個のことに集中しなくてもいいのだ~!!喜

 

 

発想のおもしろさは、化合物のおもしろさである

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新しいことを考えるのに、すべて自分の頭から絞り出せると思ってはならない。無から有を生ずるような思考などめったにおこるものではない。

 

すでに存在するものを結びつけることによって、新しいものが生まれる。

 真にすぐれた句を生むのは、俳人の主観が受動的に動いてさまざまな素材が自然に結び合うのを許す場を提供するときと書かれています。

 

本当にいい上司は、多種多様な部下たちが意見を言いやすい雰囲気を作る人といいます。

よく、パクリバンドといってあのバンドはOOのパクリだ!みたいな意見を見たり聞いたりしますが、全く新しいものなんてなくって、自分の目には新しくても世界規模で見たらすでに生まれているんですよね。

 

個性というのは「こうしたい!!これを伝えたい!!」っていう主張じゃなくて、その主張が自然に結びつく"何か"と結びついたときこそ真価を発揮するという話でした。

 

これはとっても興味深いなぁと思います。

自分の気持ちだけでは、他人には面白さが伝わらず独りよがりになってしまう。

だけどそこに"何か"が結びついたとき、新たな発想が生まれる。

 

その"何か"をじいいいいいいっとまだかまだかと待ってはいけない。

それはそれ、と割り切って眠ったり他のことに目を向けたりして、主張を寝かせている内に、それに呼応する素材が育ってくる。

 

私はマイペース、まったり気長に人間なので、こういう思考回路は大好き。

生き急がずに、日々を楽しく生きる。

一見ボーっとしているように見えるかもしれないけれど、一点しか見ないよりきょろきょろしてた方が刺激はたくさんありますし。

 

クレヨンしんちゃんのボーちゃんは、春日部防衛隊の中でここぞ!ってときに頼りになるし、自分の意見もしっかり持っていて、好きなもの(石)もある。

普段は地味でリアルおままごとでも犬役が多いけれど、彼は人と人を結びつけ許す場を提供しているようにも見える。

個性豊かな、しんのすけ、風間くん、ネネちゃん、まさおくんがそれぞれの意見を言っても仲間割れしないのは、ボーちゃんがいるからだと思う。

 

発想や創造だけじゃなくて、コミュニケーションにおいても言えることだなぁって思いました。

一緒にいる人が変われば自分も変わる。

自分と他人が結びついて、新たな思考が芽生えたり視野が広がったりする。

 

物事も人間も"何か(誰か)"が面白さを生みだす。

 

 

 

読書における知的活動

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知的活動を3つに分ける。

 

①既知のことを再認する。

→すでに経験して知っていることが書かれている文章を読む。

分かる~的な読書。

青春小説、恋愛小説など。

 

②未知のことを理解する。

→既知の延長線上の未知を解釈する読書。

分かる部分と分からない部分がある読書。

純文学など。

 

③まったく新しい世界に挑戦する。

→理解の難しい読書。

ほとんど分からない文章を読みつづけ、長い間考えに考え抜くような読書。

専門書など。

 

と3つに分けて考えることができる。

私の中では、

①は朝井リョウの「何者」や、あさのあつこ「バッテリー」など、読んでいてキャラクターの心情が予測出来る小説にあたります。

いわゆる分かりやすく安心して読めるもの。

 

②は中村文則作品(銃、遮光)や吉村修一作品(悪人、怒り)など。

分かる部分と、解釈が必要な部分に分かれている。

なぜ主人公はこう思うのか?こういう行動をとるのか?

そういった自分にはない価値観が書かれているもの。

 

③はバタイユ。

分からない部分が大半を占める。

この読書は決して楽な読書じゃない。

むしろ自分と向き合う修行のようなもの。

 

読書のすすめは色んな人が色んな言葉で唱えていますが、果たしてこの3つの中のどの読書のことを言っているのでしょうか。

 

私はもともと読書が好きでなく読むものといえばそのとき流行っているもの、東野圭吾とか湊かなえとか映画化したものがほとんどでした。

だいたいミステリーですね。

問題が起きて、さぁ犯人は誰でしょう?みたいな。

こういう読書って「犯人は誰だっ!?どうなるんだ!?」っていう特に自分が考えなくても楽~に楽しめちゃうんですよね。

高校生のときに流行ったのは、山田悠介でした。

みんなでこぞって回し読みしてました。

↓全国のサトウさんが震えた作品。

 こういう刺激的で一気に興奮させてくれるような小説ばかり読んでいました。

 

もし私が今「読書始めようと思うんだけど何かオススメある?」と聞かれたら、絶対にミステリーとサイコパス作品は薦めないと思います。

別にミステリーを軽視しているわけではありません。

しかし、ミステリーだと"犯人探し"とか"犯人の犯行動機"に絶対目がいっちゃうんですよ。だから、疑問点がすでに作品の中にあるものじゃなくて、自分で疑問点に気付くような作品がいいと思うのです。

 

しかし読書を全くしてこなかった人に、中村文則とか太宰治とか薦めても読書ってつまらないって思われるのじゃないかと思うので、こちらも薦めません。

だって、読書し始めた当時の私がつまらなかったから。

「うん。で?だからなに?オチは?何が言いたいの?」

こういう感想しか出てこなかったです。太宰治はまだ「人間失格」とか共感出来たので②の部類に入ったけど、中村文則は「は?」っていうほぼ③みたいな感じでした。

今やっと楽しめるとこまで来た感じです。

 

 

なので、もしオススメするならこれです。

 サイコパス要素があるので飽きずに読み続けられ、SF要素があるから想像力フル活動する必要があり、ちょいエロ要素もあるので恋愛的にも切なかったりするし、最終的には人間の卑劣さに辿り着くという、長編小説ではありますが読みやすく「人間とは何か?」と、そこから哲学に興味が沸く可能性があり、恋愛小説にもSF小説にも興味が沸く逸作だと思う。

 

私は①、②、③まんべんなく読むのが良いと思います。

読みやすい①だけ何百冊読んだって読書の本質には近づけない気がするんです。

これは②ばかり③ばかり読んでも同じこと。

 

読書の本質は、人はそれぞれ違うということを知ること、想像することだと私は考えます。

そんなの日常生活で分かるわ!って思う人もいると思うし、もちろんそれは大前提です。だけど、リアルなコミュニケーションってほとんどが飾られたものです。目に見えるものって綺麗にデコレーションされているのがほとんどなのに、なぜか騙されてしまうんです。

 

私が小学校のころ(たぶん)、浜崎あゆみの「appears」がそこらかしこで流れていました。私は、そのサビの歌詞を聞いて「何言ってるんだろう、当たり前じゃん」って思っていました。

恋人達はとても幸せそうに

手をつないで歩いているからね 

まるで全てのことが上手く

いってるかのように見えるよね

真実は

ふたりしか知らない

 そりゃ恋人達だってケンカしたりするでしょうよって思ってたんですが、大人になるとこの歌詞がすっごい分かるんですよ。

 

まず小学生っていうのは「目に見える」環境なんですね。

完璧な人なんていないっていうのが目に見えているんです。

かわいい子だって男子にからかわれて泣いてたり、スポーツ万能の男の子が算数で泣きそうになってたり、毎日常にキラキラしてる子なんていないんです。

 

だからクラスメイトに羨望を向けることはあっても、人には得手不得手があること、かわいいとかスポーツが出来るとか、それだけじゃ生きていけないんだってことが目に見えて分かる。

 

だけど大人になると、今でいうリア充みたいなのに遭遇することが増える。

いつもキラキラ。常に笑顔。常にハッピー。

そう、まさに「まるで全てのことがうまくいってるかのように見える」環境になるのです。

心の奥ではそんなわけないって思っても、目に映るものを疑うのは難しい。

加えて、相手はキラキラしたことしか言わない。

目と耳で得た情報と、確信のない自分の「そんなはずない」っていう感情。

どちらの方が信用出来るかっていったら、目と耳で実際に得た情報だと思う。

人はなるべく自分を良く見せようとするし、一面しか見せようとしない。

 

本の中の主人公は嘘をつかない。

嘘をつかないというか、自分の心の声っていう感じだから嘘をつく必要がない。

読者に対してかっこつけることも、良く見せようともしない。

 

頭では、人は人って思っても、イイ面ばかりが目について自分に自信を失くしたり、賛同を得られないときには自分が悪いんじゃないかとか落ち込んでしまう。

 

でも本の世界には、自分と同じことを考えている人が絶対いる。

それでもって反対の意見も分かりやすく書いてある。

 

私は、リアルのコミュニケーションだけではとても不安です。

自分の何となしの一言で相手が傷付いていたらどうしよう・・・とか、この人はなんでこんな失礼なことを言ってくるんだろう?とか、当人には聞けない不安が日常生活にはたっくさんあります。

 

そういうときは、本が慰めてくれるし、新しい考え方を教えてくれる。

バタイユ読むときなんか、「そんなことよりエロスについて僕の考えを聞いてくれ!」と言われているようで楽しい。

人の情熱に触れやすいのも読書の良さだと思う。

 

私は読書が大好きだけど、本を読まない奴はダメだとか、速読多読がいいとか、本を読むと頭が良くなるとか、そういうのはよくわかりません。

 

読書だろうが、なんだろうが好きなら始めればいい。

それだけです。

知識がどんだけ増えようが人は死ぬし。

 

 

本書は、著者自身ハウツー本じゃないと言っている通り、こうすればイイ!っていう本ではありません。

こういう考えもあるよ、こうするといいと思うよ、っていうのを話してくれています。

 

 

私の恩師は、私が悩んでいるとき「大丈夫。今は足りないだけだよ。そのうち自然に溢れるから。」と言いました。

どれくらい足りないのか、それは知識なのか感性なのか、全く何も分からない。

どうしたら増えるのかとか、どうすればいいとかそういう助言は一切ない。

私は、とりあえず本を読もうと思った。

好きだから。そして、最初は自分が好きなホラーとかサイコパス系から。

そこから、どんどん色んなジャンルに興味が出て色んなジャンルのものを読むようになった。

好きな作家も出来た。

 

これが、私の中で「寝かせている時間」なんだと思う。

少しずつ何かが溜まっていっているような気になります。

 

誰でも死ぬし。

色んなことして気長に待とう。

道草した先で、本当に欲しかったものが見えてくるかもしれないし。