≪内容≫
高校入試で全教科満点をとった秀才の佐条利人、ライブ活動をして女子にも人気のバンドマン草壁光。およそ交わらないであろう二人の男の子。そんな「ジャンルが違う」彼らは、合唱祭の練習をきっかけに話すようになる。放課後の教室で、佐条に歌を教える草壁。音を感じ、声を聴き、ハーモニーを奏でるうちに、二人の心は響き合っていった。ゆるやかに高まり、ふとした瞬間にはじける恋の感情。お調子者だけどピュアで、まっすぐに思いを語る草壁光と、はねつけながらも少しずつ心を開いてゆく佐条利人。互いのこともよく知らず、おそらく自分のこともまだ分からない。そんな青いときのなかで、もがき、惑いつつも寄り添い合う二人。やがて将来や進学を考える時期が訪れ、前に進もうとする彼らが見つけた思いとは…。
正直、本作はNLだったら「なぜ映画にした!?」と思うくらい普遍的なお話です。
①合唱の練習をきっかけに出会う
②好きになっちゃう
③実は両想い
④でもタイプは派手と地味で正反対
⑤そんなとこも悩む
⑥でも結局好き
⑦進路悩む
⑧遠距離恋愛になっちゃう
⑨ケンカ
⑩仲直り、ラブラブ
簡単に言うとこんな感じです。でも、そういう「普通」の恋愛の輝きみたいなのが一番シンプルで美しいのかもしれません。
恋愛をする資格
そんなもの誰にでも与えられているようで、自由なようで、本当はすごく決まりごとが多いものかもしれない。それを決めてるのは自分自身でいわゆるタイプとか、そういうもの。年齢・顔・性格・声とか職業とか、大人になるほど項目が増えていく気がする。
金髪のイケイケボーイな草壁光と黒髪眼鏡の佐条利人は見た目も中身も正反対だったが、恋というのは自分にないものを持っている相手にこそ反応するもので、二人は自分にないものを持っている相手を尊敬しながら、自分の持っているもので相手を包みこんで行く。
しかし二人は男同士であり、それは真面目で繊細な佐条にとっては一つの関門であった。
だが自由人な草壁が「好きだから好き」「好きだからキスしたい」「好きだから心配する」「好きだから応援する」「好きだから傷付く」「好きだから相談する」と、他の誰かに分かってもらえないとしても好きだから、想いをストレートに伝えていく。
草壁はあっさりと友人にカミングアウトしますが、友人は「今まで色んな女と付き合ってたけど、本当の初恋なんじゃねーの」と答える。
「本当の恋」に性別は関係ない。
この淡い水彩画の世界が、世間的には認められない恋愛の儚さをイメージさせて、内容だけ見れば"普通の恋愛"なのに性別が絡むと必要以上に感傷的な気持ちになってしまうのは、やはり観てる側の私に同性愛=イレギュラーという感覚が染みついているからなのだろう。
特別なものは何一つない普通の恋愛。
ただそれが男の子同士なだけ。
それは普通じゃないんでしょうか。
人が人を好きになる。
世界ではこれが当たり前の感情のようになっていますが、果たしてどれだけの人が本当の恋をしているのでしょうか。
今世で本当の恋だと呼べる季節を迎えることができたら、それだけで私は自分に満点をあげる。