深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

ナラタージュ/島本理生~心の中に大切に思う誰かがいるからこそ目の前の人を大切にすることができる~

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≪内容≫

 お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある―大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。

 

 こういう男の人って罪よなぁ、と思う。

  せい愛も男女の設定似てるんですけど(こっちは上司×部下)私この漫画が凄い好きで、ナラタージュもすっごい泣いて、ほんとこういう男の人というか恋愛の形が好きなんだな・・・と思って軽い絶望を感じるZE。

 しかし、本作のあて馬的存在の小野くんに出会って、あ、こういう男の人にぶち当たったのは自分だけじゃないんだ。島本先生も当たったことがあるのかもしれないし、これが人気作品ということはもっと多くの女性がこの手の男性を通過したのかと思うと、ものすごい勇気と言うか心が軽くなった。

 映画見たい!

 MJの葉山先生めちゃくちゃ見たいな。

 

一生に一度の恋

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「本当は、ずっと君のそばにいてあげたかった」

  高校生のときに出会った世界史の教師・葉山に救われた主人公・工藤泉は以来ずっと葉山を思い続けていた。大学生になり、教師と生徒という関係は終わったが葉山の個人的な問題は解決しておらず、お互い想い合いながら一線を超えずに過ごす日々は泉には辛く、泉は告白してきた小野と付き合う。

 小野と向き合うことで泉は葉山を忘れようとするが、葉山からの電話と不安定な小野との関係に泉は翻弄される。

 

 この物語は私の男と同じく、主人公の女性が結婚を控えたある時に相手の男と寄り添いながら過去に猛烈に愛した男との日々を回想するという流れです。

 

 この二つの物語から感じるのは恋愛と結婚というのは別、ということです。恋愛はそれこそ激しく燃え上がるけれど花火のように大きく咲いて散る。しかし結婚は継続していくものであり生活です。愛が、家族愛ではなく恋愛であるためには、一緒にはいられないのです。

そういう破局こそは、青春にふさわしい唯一の破局であり、そういう破局の機会をのがせば、その代わりに青春そのものが死ななければならぬ。 

 (三島由紀夫/禁色より)

  もしもこの二人が破局しなければその代りに「一生に一度の恋」は死にます。私はこの概念がものすごくしっくりくる派なので、葉山と泉がもしこの先付き合って文字通りずっと一緒にいたならそれはどこかで形を変えて恋ではない何かに変わるのではないかと思う。(それでも変わらない未来を描いているのは今夜、ロマンス劇場で)

 

 だから最初っから分かっているのだけど、それでも悲しい。

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「葉山先生って、本当は泉のことが好きなんじゃないの」 

  泉の両親はドイツで暮らしており、大学生の泉は一人暮らし。葉山は母子家庭で育ち、父親のことをほとんど知らない。そして小野も昔は両親の仲が悪かった、と語る。この家族設定がどうキャラクターたちに影響しているのかいまいちそこのところはよく理解出来なかったのですが、一つ言うなれば、これはあくまで「恋」であり「生活」には直結していない物語ということです。

 

 なんだか色んな小説を読んでいると、その作者の色というか外せない設定みたいなのがあると思うんですが、村上春樹小説ではおなじみの自炊料理がここでは一切出てこないのですね。村上春樹の小説はファタンジーめいていながらかなりリアルです。金とご飯と筋トレです。

 

 ですが、本作の主要キャラ達の生活はかなり揺れています。

 何の連絡もなしに友達を家に招いちゃう小野、生活感皆無な冷凍グラタン葉山、牛乳をストローで飲む泉。おまけに葉山と泉は体調不良のオンパレード。不健康はもちろんですが、そこにルーティーンがないんですね。いつも不安定。

 だからこそこれは「恋」の話なのだなぁと思うのです。だって恋すると絶対習慣が崩れるじゃないですか。友達とは違って家族とも違う他人と急激に近づこうとしたら絶対安定してはいられない。(だから村上春樹の作品ってカップルの友達、とか妻がいなくなる、とか他者or一人なのかな・・・。)

  小野のように自分だけを見てほしい!って人にはキツイかもしれませんが、私は葉山先生の言うように心の中に大切に思う誰かがいるからこそ目の前の人を大切にすることができるって思う気持ちが分かるのですごく切ないけれど暖かい物語だと思いました。しかも何より読みやすい。