深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】寝ても覚めても~自分の気持ちを大事にできる人はうらやましい~

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《内容》

濱口竜介監督が柴崎友香の原作を映画化。丸子亮平は勤務先の会議室へコーヒーを届けに来た泉谷朝子と出会う。真っ直ぐに想いを伝える亮平に惹かれていく朝子。しかし、彼女には亮平に告げられない秘密があった。

 

この映画、真っ先にこちらが浮かんだ。

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 寝るってどこかに行ってるから、寝てるのか起きてるのか分からなくなってくるとやばいわけです。

 この映画、私は主演の二人の不倫で知ったクチなのですが、いい映画だなぁと思います。小説すごくいいんだろうなぁ、と思いました。これ、本作読んだ後だと結末変わりそうだなぁ。とりあえず映画版の解釈で書いていきます。

 

私を捨てる世界、私を守る世界

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 この物語、主人公の朝子(唐田えりか)が、同じ顔の男と二度恋をする、というお話です。

 最初の男とは運命的な出会い。どこまでも自堕落な現実味のない恋だった。どこか依存的で、彼がいなくなることが怖くて仕方なくて、でも彼はどこかに行ってしまった。何も告げずに。

 

 二番目の男とは東京で出会う。

 最初は、最初の男だと思った。だけど、同じ顔と同じスタイルでありながら二人は全く別人だった。

 だけど、朝子は二番目の男と付き合う。最初の男の身代わりなのか、それとも二番目の男自身を愛しているのかわからないまま。

 

 しかし、そんな曖昧な時間は最初の男が現れたとたん一気に壊れていく。今の男を愛している、そう思っていたのに、朝子が選んだのは自分を捨てた最初の男だった。

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 私が思うに、この二人の男は二つの世界のメタファーです。

 自分を傷付ける世界と自分を守ってくれる世界。

 

 最初の男との恋では朝子は一人で立つことができず、二番目の男との恋では支えながら立つことができた。そして二人を失った世界で朝子はやっと自分の足で地に立つのだ。

 

 恋愛とはなんぞや、と言うと結局は自分。

 

 自分探しに旅に出たり、一人で瞑想したりすることもあるけど、なんだかんだ一番傷ついて傷付けて磨かれるのは恋愛だったりするのである。

 

 この映画は、自分対世界を描いていると思うのです。

 私たちは選べる。

 最初の男との恋のように自堕落に無責任に生きていくことも、二番目の男との恋のように曖昧な感情のまま生きていくことも。そして、自分の足で立ち、守られることより守ることを選ぶことも。

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ああ、でもほんまはうらやましい
大事なんやったら大事にしたらええやん
どうせそれしかできへんのやから


 

  私たちはわがままだ。

 そしてそんな自分を責めて、相手のためとか将来のためとか漠然とした不安のために大事なものを自分の心以外にしてしまうことがある。

 

 もし朝子が、二番目の男が傷つくことや二人の将来を考えて、最初の男との決別をしないまま二番目の男を選んでいたらどうなるだろう?

 結果として、朝子は最初の男としっかり決別するんだけど、それは朝子が自分の気持ちを選んだからなんですよね。

 

 他人を傷つけると分かっていて自分を大切にするのは難しい。だけど、私もそういうことができる人のこと、「ほんとはうらやましい」って思ってる。

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  他人から見て間違いだろうが、世間が許さなかろうが、どうせそれしかできへんのやったら大事にするしかないよね。