≪内容≫
ケヴィン・デ・ラ・クルス監督が浅野忠信主演で描くクライムサスペンス。マフィアが宗教と力で支配するマニラのスラム街。冷酷な殺し屋が組織の女をボスから救い、街を捨てる。追っ手が迫る中、初めてお互いを理解した男女の愛と破滅の逃避行が始まる。
ほぼ台詞ナシ。
言葉は俳優ではなく音楽が語る。
とりあえず、音楽がいい。
音楽が、いい。
芸術映画大好き
右に音楽の歌詞が出てくるんですけど、その歌詞がすごくいいんですよ。
この映画のために作ったのか、既存の曲なのか分からないけど、すごくいい。
芸術映画と私が思うのは、ストーリー性の薄い作品です。
この作品以外だと、カルト映画と名高い「ひなぎく」。
映画も小説も、終わりとか答えがあるものがとにかく多くて。
「意味」とか「理由」とか、そういうものが割と明確。
サスペンスやミステリーは犯人を見つける、ホラー映画は犯人なり幽霊の原因を探る、恋愛映画は別れやカップル成立に向かう、青春映画は迷いの末に前を向く。どんなに「?」と思う作品でも、こういう流れみたいなものが実はしっかりとある。
私の中で芸術は、過程とか道筋を表すものじゃなくて一瞬を切り取ったものなんです。
本作も一応、恋の始まりと終わりという道筋があるんですけど、ただ雰囲気を感じるような作品になっててすごく好きです。
このデタラメなチューニングのギターを弾く男と、それに寄り添う女。
空室だらけのビルの一室で、壊れた音を奏でる男と笑う女。
それだけで、ものすごく切ない。
こういう刹那的な映像が何度も違う表現で出てきます。
さあ手を取り
夢の国へ行こう
蜂蜜とマーマレードの世界へ
二人の逃避行はあっさりしてるんですよ。
だって全体で73分しかないから、過剰でドラマチックな演出とかは一切なくて、サラっと盗んだ車で走りだしちゃう。
だけど、流れてくる音楽で表現できちゃうんですよね。
二人は全然会話しないんですが、音楽が教えてくれる、という感じでした。
それにしても"蜂蜜とマーマレードの世界"ってマジックワード過ぎませんか?こういう可愛らしい言葉が、この映画の世界観に飛び込んでくること自体めちゃくちゃソソられる。センスすごすぎる。
こういう十字架も頻繁に出てきます。
芸術ってそういえば言葉がないですよね。
絵画とか写真とか工作とか。小説は言葉でどれだけ読み手の世界を広げられるかってところが魅力だと思うんですが、映画の魅力って何なんでしょうね?
俳優の演技の上手さ?台本の素晴らしさ?迫力?
特に最近は、ドラマが映画になったり漫画が映画になったり、小説が映画になったりして、それって映画である必要があるのか?と思ってしまう気持ちがあります。
うーん、やっぱり少し狂ってるようなイカれてるような作品こそ映画で観たいかもしれません。
心に残る作品は、言葉が少ない、情報が少ない、音楽が素晴らしい、のどれかに属している気がします。
久しぶりに心が動いた。