深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】血のお茶と紅い鎖~誰かの死や悲しみはその地を越えて遠くなればなるほどきれいで美しい飾り物へと変化する。~

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≪内容≫

 この手作りのストップモーションのおとぎ話は、貴族の白い鼠とオークの下に住む素朴な生き物たちが、心の底から手に入れたい人形の周りに起こる闘争の物語を語っています。

 

 好きな人は猛烈に好きなヤツ。

 たった70分だけど強烈に記憶に残る。この類好きだわぁ。まず名前からして好きだわぁ。

 そしてびっくりするほど白いネズミはおそらく白人で、素朴な生き物と書かれている茶色の生物は働かされる黒人(もしくは有色人種)のメタファーでしょう。

 

綺麗なものは誰かの血で作られている

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  この白い顔の少女のティータイムから始まるこの物語は、彼女が一つの卵をティーポッドに入れたところから始まります。

 

 その卵はティーポッドの中の水流からどこかの川に冒険に出ます。辿り着いたのは茶色い素朴な生き物が釣りをしていた川。

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  流れてきた卵を発見した生き物は、それをネズミ貴族の依頼によって作り上げた人形のお腹に入れ込んで赤い糸で蓋をします。

 生き物たちは金貨と交換で人形制作を承ったのですが、いざ人形が完成すると彼らはその人形を愛するようになり貴族がやってきて倍の金貨を差し出しても渡すことを拒みました。

 

 彼らは自分たちの家の上に彼女を掲げましたが、諦めきれない貴族によって夜中に人形は奪われてしまったのです。

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  ネズミ貴族たちは何も書かれていない真っ白なカードでトランプをしていました。ひたすらに赤い血の紅茶を飲みながらカードを交換していきます。

 その三匹のネズミの中で人形を手にしているネズミは人形にも赤い血の紅茶を飲ませます。もちろん、人形なので血はだらだらと白い服を染めていきました。

 

 すると人形の中の卵が羽化し、そこから紫色の羽根をした人形そっくりの鳥が生まれたのです。

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  卵が詰められていた人形のふっくらしたお腹は今や、赤い糸が食いちぎられ中綿が散乱している悲惨な状態でした。ネズミは真っ白なカードに血で絵をかきました。その中の奥の絵は卵から生まれた人形と瓜二つの鳥です。そしてその中からハートのカードを選び、ネズミは人形のお腹の中にそっとそれを入れました。

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  一方、旅立った鳥赤い蜘蛛の巣に引っ掛かり息絶えていました。奪われた人形を探し歩いていた生き物たちは鳥の巣に引っ掛かっている人形そっくりの鳥を見てカエルの老医師のもとに鳥を運びました。

 カエル先生は彼女を緑の葉で包みこむように赤い糸で縫い合わせました。生き物たちはその葉を持ち帰り、卵が流れてきた川に流します

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 ティーポッドの中に入れられた卵はこういった旅を経て、また彼女のお茶会に戻ってきました。鳥の姿は黄色の宝石に変わって彼女のお茶の中にぽとん!と落ちてきておーしまい☆

 

 この物語は色んな想像が出来て面白いなぁと思います。私はこの物語は「私たちが普段食べてるものって色んな歴史が積み重なっていて、その遠い過去と今の自分が赤い糸で繋がれてるよね」ってことかなー?と思い見てました。

 

 不思議な生き物は、貴族たちの知恵(写真)により美しい人形を作り上げました。彼らだけでは知ることのなかった美が貴族たちによってもたらされたのです。(白人の有色人種差別)彼らはあまりに人形が美しかったので神様のように自分の家に祀ったのです。(宗教)

 

 対してネズミ貴族は真っ白なカードでトランプをするという頭からっぽだけど頭いいことやってますよ、的なパフォーマンスをします。実際は何も考えていないけれど他人からは頭良さそうに見えるように。そしてそのお伴は誰かの血で出来た紅茶(代理戦争)でした。誰かの血をごくごくごくごくと浴びるほど飲むこと(他人の犠牲)の上にネズミ貴族は生きているのです。

 しかし、人形を愛したネズミは心を持ちます。(白人の中でたまに生まれる改革者)愛した人形のお腹から彼女そっくりの鳥が生まれ飛びだった後、彼は真っ白なカードにその姿を描きます。

 何かを表現したい、残したい、そういう人間的な欲求が生まれたネズミは人形を不思議な生き物の元に返してあげようと思いました。

 

 ですが、他の二匹のネズミにはそんな心は芽生えていません。彼らはネズミを追いかけて再び戻された人形を奪還します。

 そのとき、彼女にそっくりの鳥の死を嘆いていた生き物たちにとってネズミ貴族は憎いヤツラでした。人形を返しにきたネズミの思惑は完全に空回りして最悪の結果を迎えます。

血のお茶と紅い鎖

血のお茶と紅い鎖

 

  自分とはまったく関係のないどこかの国のOO人とOO人の戦いの末、第三国に齎される富。誰かの死や悲しみはその地を越えて遠くなればなるほどきれいで美しい飾り物へと変化する。コスパがいいものが欲しい、安くてでも性能がいいのが欲しい、そういう欲望を叶えているのが誰なのか知りながら我々は目を瞑り欲望を捨てずに生きてるよね。