《内容》
過眠症で引きこもり気味の寧子は、恋人・津奈木の部屋で同棲生活を送っている。現在無職で感情を上手くコントロールできない自分に嫌気が差しているものの、津奈木に当たり散らす日々。ある日、寧子の元に突然、津奈木の元恋人・安堂が現れる。津奈木とヨリを戻したい安堂は、寧子を自立させるため無理矢理カフェバーのアルバイトを決めてしまい…。現代の若者たちの心情をリアルに綴る、エモーショナルなラブストーリー。
なんだかんだいって本谷有希子作品が好きなんだなぁ。。。と改めて思った。泣くなんて全然思ってなかったのに、最後自然に涙がこぼれた。
あたしはあたしとは別れられない
主人公の寧子(以下やすこ)は、無職でたぶん税金関連のことは何にも払ってなくて、たまたま飲み会で知り合った津奈木の部屋で眠っている。
ちゃんとしなきゃ、と思うけど思うだけでそれができないでいた。だが、そんな事態を変えたのは津奈木の元彼女・安堂だった。
安堂は津奈木とヨリを戻すため、やすこに家から出るように言うが、お金がないから無理だというやすこにカフェのバイトを紹介する。
やむを得なくアルバイトを始めたやすこは再スタートをきったかのように思われたが・・・
一方、津奈木はゴシップ記事のライター?で、自社が掲載したゴシップが元で自殺してしまった女優がいるという過去があった。
自分が見抜かれないために、他人の隠し事を世間に公表しているような感覚になったのだと思う。それが津奈木の苦しみでありその苦しみを見抜いていたのがやすこであった。
俺さ
お前のこと
ほんとはもっとちゃんと分かりたかったよ
津奈木はやすこにこういうが、きっと内なる自分に言っていたんじゃないのかな、と思うのであった。
分かり合うっていうのが、何を意味するかによると思うけど、きっとこの作品の
「ほんの一瞬だけでも、分かり合えたら。」は、自分の分身のような、そういう一体感というか別の人間でありながら同じ心臓で動いているような、そういう連動感を意味しているのではないかなぁと思う。
あたしが頭使って考えてんのと同じくらい考えて喋って
あたしがエネルギー使ってんのと同じくらい振り回されろってことなんだよね
あたしと同じだけあたしに疲れてほしいって思った
やっぱ依存?
自分で自分をコントロールできないなら、自分以外の誰かがそのカギを持っているんじゃないかって、そうだとしたらもういっそその人に自分をコントロールしてほしいって思ってしまうのかもしれない。そのカギを返してもらうんじゃなくて。
生きるのって難しいなぁって思ったし、ほんのささいなことで感情が爆発してしまうやすこを素直なんだな、って思って見てた。