《内容》
二転三転する事件に翻弄されるなかで、社会正義や共同体の在り方について悩み、お互いを見つめ直す探偵コンビを描く、ノンストップ・アクション・エンタテインメント。
読みやすくて小一時間ほどで読み終わっちゃいます。
個人的には癖強いコチラの方が好き。
読みやすいけど、桜庭さん特有の薄気味悪さとかがなくてアクのない山菜食べてるみたいな感覚でした。
「わたしは強いつもりの愚かな人たちの屍を超えていくの。そしていつの日か人類最強になる。弱いまま最強というパラダイムシフトを達成して、ね」
元オリンピアの紅(クレナイ)と元刑事の橡(ツルバミ)が二人でやっている道明寺探偵屋。そこにやってきたのはハイタカと名乗る若い女の子。ハイタカは一度は探偵事務所を出るけれど、街で追いかけられ紅に助けられる。
ボディガードとして紅を雇ったハイタカは紅に向かって「強くなっても無駄、愚かな人たちの屍を超えていく」と宣言する。お人好しな紅はカチンとくるも、はいはいと受け流す。
だが、実はハイタカが闇サイト「Dead or Alive」で生捕りだろうが死体だろうが懸賞金がかけられていることを知り…!
という内容です。
チャンドラーの小説にありそうな横暴な依頼者が特徴で、お人好しな紅、冷静な橡もキャラが立ってていい感じ。二人の探偵事務所を作った人は別にいて…というのも次回作の伏線かな?と思っちゃう。
本作を「少女を埋める」のすぐ後に読んだから思ったのですが、冬子の一つのアンサーなのかな、と思います。紅のように名誉より本能で損得関係なしに生きていく女と、ハイタカのように賢く人を踏み台にして生きていく女。二人の女を追いかける屈強な男がいるけれど、立ち向かい方も二人は全くの別物。
男女の一生がカードゲームだったら、美貌、頭のよさ、お金、それらは男であれば何のしがらみもなく得するけれど、女であれば異能者として埋められてしまう。
利口な女は考えものだ・・・というのは「少女を埋める」で冬子が言われた言葉。利口すぎるハイタカはどうなってしまうのか。冬子が受けた時代錯誤な言葉を桜庭さんはどう昇華するのでしょうか。