深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】羊たちの沈黙~つまらない時間が一秒もない稀有な映画(※ただしグロい)~

≪内容≫ 女性を誘拐し、皮を剥いで殺害する連続殺人事件の捜査を任命されたFBI訓練生のクラリス。彼女に与えられた任務は9人の患者を惨殺して食べた獄中の天才精神科医レクター博士に協力を求め、心理的な面から犯人に迫ることだった。レクター博士は捜査に協…

伊豆の踊り子/川端 康成~同じものを見ても一つになれるわけじゃない~

≪内容≫ 旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899‐1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「…

潤一郎ラビリンス〈1〉/谷崎 潤一郎~快楽に導くのは究極の我慢~

≪内容≫ 荷風の激賞をうけ颯爽文壇に登場した谷崎。―清吉と云う若い刺青師の腕きゝがあった。彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。官能的耽美的な美の飽くなき追求を鮮烈に描く「刺青」ほか、「麒麟」「少年」「…

車輪の下/ヘルマン・ヘッセ~挫折したときに故郷に帰りたいと思う人は、なぜそう思うのか。~

《内容》 ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼…

眼球譚(初稿)/バタイユ~この世界がまっとうに思えない人たちへ~

《内容》 一九二八年にオーシュ卿という匿名で地下出版されたバタイユの最初の小説。本書は、著者が後に新版として改稿したものと比べて全篇にわたって夥しい異同がある。サド以来の傑作と言われるエロティシズム文学として、「球体幻想」を主軸に描き上げた…

東京奇譚集/村上春樹~要らないものを要らないと自分で理解するための読書~

≪内容≫ 肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生…

【映画】ヴィオレッタ~生きることを後回しにした芸術はいつか死ぬ、か誰かを殺す~

≪内容≫ 美しすぎる少女は大人を狂わせた――。女流写真家の母アンナ(イザベル・ユペール)は仕事で滅多に家に帰ってこず、母の愛情を求める娘のヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)は優しい祖母に育てられながら母の帰りを待つ。ある日、突然帰ってきたア…

【映画】罪と罰♦白夜のラスコーリニコフ/マッチ工場の少女~シンプルな映画って素敵だ~

≪内容≫ アキ・カウリスマキの処女作『罪と罰 白夜のラスコーリニコフ』と、ささやかな幸せを求めても得られない人々をアイロニカルに描いた『マッチ工場の少女』の2作品を収録。 ドストエフスキーの「罪と罰」のラスコーリニコフらしい。 罪と罰〈上〉 (新潮…

【映画】エル・スール~子供が前進し大人が後退するときに限り、子供は親を追い越すのだ。~

≪内容≫ 1957年、秋。ある朝、少女エストレリャは目覚めると、枕の下に父アグスティンの振り子を見つける。エストレリャは父が死んだことを悟る。彼女は回想する。内戦下のスペイン、<南>の町から<北>の地へと引っ越す家族。8歳のエストレリャが過ごした“…

【映画】野いちご~人付き合いとは、そこにいない人の悪口を言うことだ。~

≪内容≫ イングマール・ベルイマン監督の代表作をDVD化。老医師の1日を通し、人間の老いや死、家族をテーマに描く。家政婦とふたりきりの日々を送る医師・イーサクは、奇妙な夢から醒めたある日、車で旅に出るが、先々で不思議な出来事が待っていた…。 これち…