≪内容≫
ここは螢光町。工場から出る黒い煙で光を失い、町にいる大人は疲弊しきっていた…螢光中学に通う「光クラブ」の9人の少年たちは、町の廃工場にある秘密基地に集い、機械(ロボット)を開発している。少年たちは大人のいない世界を夢み、最強の兵器を開発していたのだ。その機械(ロボット)は、ライチと名付けられいよいよ起動を果たす。少年たちに命じられたライチは、光クラブに美しい希望をもたらす偶像として少女・カノンを捕えてくるが…光クラブのリーダーであるタミヤ、実質支配者のゼラ、ゼラを偏愛するジャイボと絶対的な忠誠を誓うニコ…それぞれの愛憎が渦巻くなか、光クラブ内では裏切り者探しがはじまる。カノンとの交流で、機械(ロボット)ライチが人間らしさを学んでいく一方で、少年たちの世界は、狂気に突き進んでいく…
永遠に 少年のまま 永遠に 美しいまま 僕らの 世界が 終わる
日本人って遺伝子なのか分からないけれどドイツ語にどうしても惹かれちゃうよね。

極黒のブリュンヒルデ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 岡本倫
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/08/26
- メディア: Kindle版
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かっこいいんだよな、文字もそうだけど発音も。
潔癖な反抗期と粛清
カリスマ的リーダー・ゼラと8人の下僕たち。彼らが住む螢光町は工業地帯でその排気ガスによって町は光を失い、大人たちはその空気に長く体を晒した汚い存在となっていた。
汚れた町とその町を支配する大人を一掃すべく立ち上がった「光クラブ」はある日、美しい少女に出会い彼女を教祖として祀り上げることで自分たちの正当性を強く自覚するが、中学生の彼らには大人への一歩とでもいう性の目覚めが待っていた。
少女を希望の光と称したのは、彼らの日常の世界では希望が見出せないから自ら作り出そうとしているのだと分かる。
大人になる・・・性への目覚め、声変わり、体格の変化などそういった自然の流れのまま成長すれば、この町にいる疲弊しきった汚い大人と同じ生き物に変わってしまう。
しかし、成長は止められない。
だから自ら切断するのだ。
みんな何となく大人になって、何となく就職して、何となく結婚して・・・そういう誰も疑問に思わないレールの上から飛び降りる。変わることへの恐怖、未来への絶望、汚い世界への拒絶反応。いや~正直分かる。
汚い大人もいっぱいいるからイヤんなるのも分かる。大人の男女が汚くて、惨めで可哀想に見える時もあるかもしれない。でもその時「こんな大人にはなりたくない!」って思った自分は自分が大人になっても永遠に消えないから大丈夫。
この作品、大人を嫌い、蔑み、軽蔑した少年達は実は大人からすれば相手にもされていないという所が妙にリアルだ。
自分達が蛍光中に君臨する!という思想も大人たちには知られることなく、全員が死んだ。戦う前に仲間内の抗争で死んだから、彼らの苦悩は彼らの作った「光クラブ」という小さな世界の中でしか生きられなかったのだ。
結果的に言えば彼らは永遠に少年のまま永遠に美しいまま終わったので彼らの望みは叶えられた。
映像は美しくゴシックテイストで内容も潔癖な反抗期というスタイルが斬新だなぁ、と思いました。中学生のときって粛清とか強い言葉を使いたがる、そういう部分も描いていて面白かったです。