
≪内容≫
宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせるが、自らも瀕死の状態に陥った。だが、二人とも病院に送られ、一命を取りとめる。この事件は、ザラチェンコと深い関係を持つ闇の組織・公安警察特別分析班の存在と、その秘密活動が明るみに出る危険性をもたらした。危機感を募らせた元班長は班のメンバーを集め、秘密を守る計画を立案する。その中には、リスベットの口を封じる卑劣な方策も含まれていた。
ミレニアム全部面白いんですけど、私は③が一番好きかなぁ~と思います。タイトル通り、眠れる女=リスベットですから、今回戦うのはリスベットではなく狂卓の騎士=リスベットを信じる男たちです。
公安警察VS狂卓の騎士
今回は前回の「火と戯れる女」の続編になります。
彼女ほどの頭脳を持ちながら社会的に無能と判断され後見人もしくは精神病棟への収容を強く求める社会とは何なのか、なぜ彼女をここまで貶める必要があるのか、そこにどんな秘密が隠されているというのか。
ミカエルの武器はペンです。
彼はこの武器で公安警察と戦います。しかし騎士は彼だけではありません。
リスベットの脳に詰め込まれた弾を取り除いた医療に情熱を注ぐ医師。
リスベットの精神鑑定をしたいとやってきた悪徳精神科医テレボリアンの裏取引を速攻で拒否します。もしも彼がテレボリアンの権威にひるみ、彼女の鑑定をさせていたら事態はもっと悪くなっていたでしょう。
そして彼女の勤め先、ミルトン・セキュリティの社長ドラガン・アルマンスキー、彼女の前後見人のパルムグレン。女性ですがミカエルの妹で女性の人権を専門に扱う弁護士アニカ・ジャンニーニ。
ザラことザラチェンコとリスベットを黙らせ、自分たちのしてきたことを隠蔽し、班を存続させようと復職し指揮をとり出す元公安のおじいさま方。
ミカエルは真実を知れば知るほど苦しくなる。
おそらく読者はリスベットかミカエルのどちらかに感情移入するかなぁと思うのですが、私はミカエルの怒り、リスベットの失望、そういったものにものすごく引き込まれました。
父親が病的なサディストで人殺しなのは、彼女のせいではない。兄が大量殺人犯なのも彼女のせいではない。
(中略)
人をレイプするようなろくでなしを後見人に指名したのも、彼女ではない。
それなのに、人生を隅々まで詮索され、釈明と謝罪を迫られるのは彼女のほうだ。彼女は自分の身を守ろうとしただけなのに。
彼女がこの精神科医の鑑定によって精神病と診断され、一生を監視されなければならなくなったのは12歳のときでした。
しかし今は27歳。彼女は大人になってから自由を勝ち取る闘いに再び舞い戻ったのです。12歳の時はひとり。でも今はたくさんの騎士に囲まれて。
ハッカーとして成敗していたリスベットは自由を欲しがりながらも表舞台に出ることを嫌っていました。それは彼女が口にした真実を誰も信じてくれず、真実を語るたびに精神病とされ自由を奪われてきたからです。
しかし、自由を得るため、他の国民と同じ権利を得るためには法廷に出なければならず、自分が受けてきた扱いや被害の告白も自らの口からしなければなりませんでした。
彼女の自由をめぐる戦いは三部作の今回でひと段落落ち着きますが、ミカエルとリスベットの関係はいかに・・・。
子供だと戦えないことが実際にあるんだよなぁ、と思います。だからこそ何とか生き延びてほしい・・・。リスベットが生き抜いてきたことに拍手を送りたい、ていうか送る。