深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】エンド・オブ・トンネル~言葉は騙し合いに使われ、沈黙が世界を変える~

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≪内容≫

 『人生スイッチ』のレオナルド・スバラーリャ主演によるクライムサスペンス。事故で妻と娘を失い、車椅子生活となったホアキン。ある日彼は、地下室で銀行に押し入ろうと企む犯罪者たちの声を聞き、不自由な身体を逆手に取って現金を奪おうと思い立つ。

 

色んな意味でたくましい。

最近、その先を自分なりに予測しながら見てるんですが、全然当たらなかったし自分的に新しい映画でした。「えええええっ・・・・」ってなるシーン、というか主人公の選択が自分の想像の何百万歩も進んでました。

 

老犬と少女の強さ

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本作の主人公は事故で妻と娘を失い、自身も車椅子生活となった男。老犬と二人暮らしで、自宅に引きこもって暮していたが金がなく家の2階を賃貸として貸し出す。すると、突然母娘二人がやってきて奇妙な四人生活に。

実は、地下で強盗を計画していた一味の彼女である母親が、男の状態を確認するために住み込みはじめ、男は地下室で彼らがやっていることを監視していた。

 

そんな疑心暗鬼で嘘のやりとりをする大人とは反対に、他人になつかない老犬と二年前から一言も話さなくなった少女は無言のままに心を深めていく・・・。

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おそらくですが、この男は犬を安楽死させ、自身も自殺しようと思っていたのだと思います。そのためにクッキーに薬を注入し、毎日何枚かつまんでる内に死・・・という展開を望んでいたと思うのですが、思いがけず事故で失った母と娘と全く同じ他人がやってきてしまったために、むくむくと生きる希望が沸いてきた。

 

少女は威嚇する老犬にひるまず近寄って行きその腕に抱きしめる。老犬の世話をし、耳に口を近付けてひっそりとおしゃべりをする。いつも抱きかかえて部屋の中を移動する。

その姿は、自分が亡くした娘の姿。犬が大好きで、片時も離れたくないと言っていた娘の姿を思い起こさせます。

守れなかった自分の母娘。そんな自分の元にもう一度どこからともなく現れた母娘の存在は男の中の父を呼び覚まします。

男は二人を守るため、すなわちこの家を守るため、強盗犯の作戦に便乗することに決めます。

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対して母親は盲目的に信じていた強盗犯のリーダーの裏の顔を男の監視カメラ映像と、犬の首輪に取り付けられた盗聴器に記録されていた娘の声で知ることとなります。

 

私がこの映画で好きだな、と思ったのは一見言葉を発しない少女と老犬が実はものすごい力を秘めていること、ただ存在するというだけで誰かの力になり得る、誰かの生きるよすがになる、何かを変える力を持つということが描かれていたのと、戦う側が善人じゃないところです。

 これアルゼンチンとスペイン合作の映画らしいんですが、圧倒的悪!とか正義!じゃなくて人間誰でも善と悪の一面は紙一重だぜ、っていうリアルが好きです。