≪内容≫
17歳の少女が過ごす高校最後の1年間を瑞々しく描く青春ドラマ。片田舎の高校からN.Y.の大学進学を夢見るクリスティン、自称“レディ・バード”。友だち、彼氏、家族、そして将来について悩む彼女の揺れ動く心情を綴る。
なぜ思春期のときにこういう映画見なかったんだろうな、って心底思うけどそのすぐ後に、見たって今みたいに素直に見れないだろって思って、もうほんと人生ってうまくいかない。
若者はいつだって生き急いでる
現代の社会への意味の分からない苛立ち、大人への反発心、何者かになりたいという夢、どこでもかしこでも手を伸ばしてあらゆるものに触りたい好奇心。
あ~青春だなァ~!
振り返ると恥ずかしいことや最低だなって思うこともあるんだけど、それでもやっぱり生命力は一番あった気がする。無礼さを凌ぐ行動力とか無鉄砲さがあった。でも親や先生は普通にムカついてたと思う。マジごめんなさい。
さて、本作はまさにそんな少女の話です。
映画の面白いところは、同じ「青春」でも表現している部分が違うところ。
この映画はとにかく周りを傷付けまくって自分を傷付けまくってなんとか呼吸している、という部分が描かれています。
兄弟のようにはなりたくない。お父さんは無職で恥ずかしい。田舎の大学に行けという母親。貧乏な家。好きになった人はゲイ。友達は太っててイケてない。
とにかくなんでも気にくわない!
その不愉快さを武器に周りを傷付けまくるクリスティンは、こんなのほんとうの私じゃない、として「レディ・バード」というもう一人の自分がほんとうの私だと信じ込む。
学校行事なんて子供くさい。ちょっと不良でスレてるやつのほうが大人っぽい。クリスティンは友達を変えて大人の世界に飛び込む。
誰だって若い時には「自分はオンリーワンで特別な存在」と思うものだし、その思いを糧に本当にひとかどの人間になる人もいれば、誰かたった一人のスペシャルになる人、本当は生まれたときからオンリーワンなのだと気付く人、誰か特別な人を見つける人、色んな人に分かれる。
クリスティンはこのたった二時間の中で猛烈に変化していく。リアルな人間では2~3年かかりそうなプロセスが濃密に描かれている。
ほんとに「生きてるだけで丸儲け」が染みるのは時の洗礼を受けてからだなぁと思う今日この頃。人を傷つけなくても呼吸する方法は人生のどこかで誰もが身につける。