深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】プレッピー・コネクション~この映画ほど「変わりたいなら環境を変えろ」の信憑性を高めるものはない。~

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≪内容≫

名門の全寮制学校に通うトビーは、思いを寄せる女の子から頼まれ、麻薬の手配を始めるが、そのうちに友人をつたって、麻薬の学校中に密売ネットワークを作り出すことになり、自らも麻薬に依存するようになる。実話に基づいた物語。

 

 小学生だか中学生だか忘れたけど覚せい剤についての授業が必ずあって、毎年ビデオと警察の人?か誰か外部の人が来て講習してたんだけど、そのときにどうしてこんな授業をするんだろう?こんな怖いことするわけじゃん、と思ってた。ビデオの中の人は虫が身体の中にいるような幻覚に怯えて発狂したり明らかにおかしくなってて、どうしてこうなるって分かっててするんだろう?って。

 でもこの映画はそういう内容じゃなくて、麻薬への出会いから描かれているんです。狂ってくけれど発狂ではなく静かにおかしくなっていく。こんな出会いなら、正直どう転ぶかは分からない。

 

人は環境の子である

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  授業の薬物防止ビデオの方がドギツイんだけど、あれってすごく簡略化されているので他人事にしか映らず恐怖は感じても危機感は芽生えないんですよね。その点、この映画はめちゃくちゃ親近感があるので、「わが人生にも起こりうる可能性」を如実に感じられる。物語の力である。

 

 主人公・トビーの家はドイツでも随一の金持ちだったが、ベルリンの壁設立と同時に全てを失った。金持ち階級からの没落は母を強くするのではなく夢の中に閉じ込めた。母は失ったものを労働で取り戻すのではなく、息子を金持御用達の学校に入学させることで取り戻そうとした。

 

 トビーは奨学金で入学を認められるが、そこで待ち受けていたのは暴力的ないじめだった。学校でも金持ちの子供は強い。彼らご子息はいつもキラキラしていていじめをしようがクラスカーストの最上位。トビーは彼らによって麻薬と出会うのであった。

特捜部Q キジ殺し(字幕版)
 

  ブルジョワジーに狂わされる物語はこちらでも↑

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 トビーは勉強はできるが、服のタグを切らずに着たりするイケてない部分があった。彼は自分が名門校向きではないことを自覚していたが母の夢を叶えるべくそこに飛び込み、洗礼を受け、恋をする。

 美しい同級生から当たり前のように問われた「マリファナ持ってない?」に、トビーは隙を見つける。彼らの仲間に入るためには、彼らに認めてもらうためには、彼らの望むものを持っていればいいのだ、と。

 その名案こそがトビーの麻薬との出会いであり終わりであった。

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  トビーは麻薬に堕ちていくのではなく、彼らの望むものを手に入れられる男というポジションを手にするため、コロンビアにマリファナよりすごいコカインを求めて旅立つ。

 麻薬取引は成功し、彼は麻薬売人として近隣の学校の生徒とも取引を始める。その額は恐ろしいほどになったが、彼は母親に義弟を装って送金していたのだった。

 

 そもそもこの学校に願書を出したのはトビーではなく母親であり、トビーの拒否を拒否したのも母親であった。トビーは母親の願いを叶えるために入学し、稼いだ金は母がまた笑えるように送金していたのだ。

 つまり、トビーは麻薬に手を出す前からかなり自分に負荷をかけていた、というか負荷をかけないといられない場所に立ってしまったのだ。

  それを維持するための飛び道具としての麻薬は彼にとって一つの命綱とも言える。恐らくトビーが自分で願書を出した学校に行っていたら、彼の頭脳が引き立つ学校に行っていたら、こんな悲劇は生まれなかったろうと思うと、人は環境の子という他ない。この映画ほど「変わりたいなら環境を変えろ」の信憑性を高めるものはない。